報酬制度(給与テーブル)の検討に向けて[その1]

Writing by:上田 明良

従業員の報酬(本記事では金銭的報酬を指す)は、経営・事業・人事を含め、会社運営すべてにかかわる重要な要素であるが、頭を悩ませるのが、結局いくら支払えばやる気を出して成果を上げてくれるのか?いくらであれば(必要な人材が)辞めないのか?いくらであれば当社に来てくれるのだろうか?という観点ではないであろうか。

報酬制度設計においてまず重視すべき要素

一般的に、報酬には、成果を上げる誘因、退社を抑止する要因、採用を決定する要因の3つの側面が存在する。
では、この3つの側面を満たすためには何を重視すればよいか?

まず考えられるのは報酬の額ではないだろうか?確かに報酬の額は重要である。特に採用側面では、要員計画・総額人件費・市場水準の観点から欲しい人材像(職務経験・保有スキル・志向性・前職年収整合 など)に沿った金額提示がポイントとなる。

しかし、金額だけでは、対象者の知りえる比較対象の中で高いか低いかだけの判断となり、先述の3つの要素を実現する上で非常に不安定性が高い。(極論ではあるが、高い報酬を払えさえすればよく、制度の必要性が問われる)

次に考えられるのは、報酬構成であろうか?報酬構成とは、各報酬項目の組み合わせや割合である。例えば、基本給のみとするか手当を含めるか、賞与は評価連動で原則固定的に用意するか、会社業績に応じた決算賞与のみとするか、エグゼクティブ層にはSTIだけでなくLTIも含めるか等、様々な観点がある。

確かに、賞与比率一つをとっても、年収における賞与比率を下げ報酬変動を低減することで安定性を高め、雇用継続を図る。賞与比率を上げ、業績連動性を高めることで個人・チームの成果向上を図るといった方法はある。

しかし、報酬構成だけでは、組み合わせのパターンが限られており、従業員へのメッセージ性も十分とはいえず、納得感を生み出すことが難しいと考える。

ここまで触れてきた、報酬の額、報酬構成は報酬制度を検討する上でもちろん必要な要素である。
実際はそれぞれ単体で設計するより、掛け合わせベストな形をさぐっていくのだが、それでも従業員にとって、金額面や各種構成に意味を感じ取るのは難しいのではないかと考える。

例えば、額と構成を変更する場合、重視したい職種を定め他職種に比べ基本給の構成比率を高め、金額を上げるといったことも可能である。
確かにその職種に対する会社からの期待は伝わるだろうが、それだけで、成果を上げるための行動の質や退社(在籍すること)への捉え方は変わらないのではないだろうか。

つまり、結果的な額や構成の前に、何に対する報酬なのか、どうすれば報酬が上下するのか、という点を明示しないと、魅力的な報酬であったとしても行動までつながらないという考え方である。
ではこれらを踏まえ、重視すべきこととは何か。それは等級である。

人材マネジメントにおいて骨格をなす等級制度

等級とは、会社として従業員に求める要素、目指す姿を基準として定め、序列化したものであり、報酬とは別の概念として整理される。
人材マネジメントにおいて、骨格をなす概念であり、等級で定められた基準を評価・報酬へ反映していく。

日本企業においては、1.職能資格、2.職務等級、3.役割等級の大きく3つに分類される。それぞれ等級基準が違っており、1.職能等級→職務に必要な能力、2.職能等級→職務の価値、3.役割等級→戦略上求められる役割(職務を共通の要件で汎用化したイメージ)が基準となる。

今回は、報酬制度において欠かせない報酬の額・構成の前提として、等級が重要であるという点に触れてきた。
次回[その2]では、具体的に「なぜ等級を重視すべきか?」という点と等級と報酬が連動させている実際の事例について紹介していく。

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執筆者

上田 明良

CANTERA1期卒業生。
大学卒業後、採用・組織コンサルティング会社にて、メーカー・サービス業・建設業・運輸業などの企業に対して新卒採用戦略立案・実行、社員向け教育研修を支援。
その後、大手SIerにて人事制度企画、ソーシャルゲームパブリッシャーにて人事責任者として人事制度、労務、採用など、人事関連の各種プロジェクトマネジメントを実施。
現在は、総合系コンサルティングファームの組織人事コンサルタントとして、新会社設立・人事制度導入・人事機能設計・労務マネジメント施策などの制度・労務領域を中心にプロジェクトを推進。

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