非常時の現場マネージャーの苦悩

最終更新日:2020/07/14

Writing by:越前谷 匡史

会社の非常時や不景気の時に、会社の風土形成の肝である現場マネージャーはどのようなジレンマを抱えながらマネジメントしているのでしょうか。

はじめに

コロナウイルス感染第二波の懸念からアメリカ株式市場が乱高下しています。日本の株式市場は米国に相当連動しますし、直近の日本を含め主要国の経済指標の落ち込みから考えると、この混乱は当面続きそうです。

一方、この数十年で大きな経済的混乱と言えば、リーマンショックでしょう。2008年9月に始まり、2009年は経済の落ち込みが激しく、私含め当時のビジネスパーソンは皆しんどい経験をしたのではないでしょうか。当時30代後半で20名ほどのメンバーを現場で預かっていたマネージャーだった私の身に何が起こったのかを、これから書こうと思います。

人事に関わるみなさんにおいては、今後不景気が長引き、ご自身の会社が苦境に立たされたときに、会社の風土形成の肝である現場マネージャーにどのようなことが起きるのか、そして現場では苦悩というかジレンマを感じながらマネジメントしている方々がいるだろうことをイメージして読んでいただければ幸いです。

平時のマネジメントが非常時に通じない

私が初めてマネージャーを経験したのは30歳の時。メンバーと1on1を毎週行いながら、いかにその人らしさを発揮させるかがマネジメントの要点だと信じていました。
37歳の時にそれまで不振の事業領域で他のマネージャーが達成させることができなかった領域・チームを立て直し、業績を達成したときは、自分のマネジメント手法は確信になっていました。

しかし、リーマンショックで外部環境が大きく変化し、その人らしさをいくら発揮させても業績があがらない状態に陥りました。メンバーの業績は落ち込み、チーム業績も落ち込む、そして会社も大きく業績が落ち込む中、会社方針としてマイクロマネジメントに舵を切り始めました。
成果をあげるためには、これだけのプロセス数値が必要であり、その数値を達成させることが大事だということです。その数値は相当無理なもの(に思えた)で、顧客のことを考えずにとにかく行動しなければ達成できないような数値。この時、私は顧客にとって意味のない数値を達成しても無意味と考え、メンバーに無理させることはしませんでした。

かといって成果をあげる対案もなく、結果的にメンバーは業績の不振のまま。最終的には一部のメンバーは雇用契約の延長がなくなり、会社を去ることになっていきました。

とにかくやらせるマネジメントの効用

一方で隣のマネージャーは強い口調でメンバーを指導し、半ば無理やり数値を達成させていました。そのやり方に違和感は覚えていたものの、リーマンショックのような混乱期にも関わらず、そのマネージャーのもとでメンバーの中には達成までいかないまでも、そこそこの成果をあげるものもいました。結果そのマネージャーのチームから解雇になったメンバーは少なかったように覚えています。

マネジメントにおける「真摯さ」の重要性

ドラッカーは「マネジメント 基本と原則」の中で、マネジメントにおける「真摯さ」の重要性を述べています。
ドラッカーのマネジメントにおける「真摯さ」ですが、原文では「integrity」とあり、意味は正直さの実践と共に、高い道徳・倫理的な原則と価値観を持って一貫し、妥協なくそれらを遵守する振る舞いを指す、とあります。つまり、ひたむきなだけではなく、

・高い道徳や倫理観を持つ
・妥協なく成果に責任を持つ

ということになります。その点で、私は妥協なく成果に責任を持っていなかったのか、いや、持っていたつもりでした。
しかし、徹底という部分で足りなかったのかもしれないと、今は思っています。

ただし、自分の個性から、とにかくやらせるマネジメントはできないだろうと思うので、もし、今、同じような状況におかれたなら、メンバーらしさをより高い次元で発揮させることを考えるだろうと思います。
具体的には数値目標を同じぐらい効果のあると思われる代替案をメンバーと共に考え、それを実行するなど、なんらかの形で踏ん張ると思います。

結果的にメンバーは何人かは会社を去る結果は変わらないかもしれませんが、メンバーや私たちの後悔の度合いは低いように思います。

苦しい時こそ一人で抱えずチーム全員で戦う

苦境時、現場のマネージャーは会社の方針とメンバーのコンディションの悪さの板挟みにあうことが多々あります。これまでの私の経験から、平時に上手く回っていた手法はリーマンショックやコロナ禍の非常時には通じないことが多いです。平時から非常時にモードを変えて、妥協なく成果に責任を持つために、自身、そしてメンバーの個性を踏まえて、どうしたらよいかを徹底的に考え、行動するしかないです。マネージャーの個性・タイプによっては、メンバーに悩みを打ち明け、一緒に考え、実行するというシンプルな行動が好回転に繋がることもあるでしょう。あらためて、今回のコロナウイルスの影響が長引く前提に、仲間を信じて、そして妥協なく成果に責任を持ち続けましょう。

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執筆者

越前谷 匡史

CANTERA 4期生。
1995年に株式会社リクルートに入社し、新卒採用チームに配属される。新卒採用の経験は通算で5年。その後、人材紹介事業を10年以上経験。紹介事業では第二新卒を支援するグループの立ち上げから組織拡大を牽引。
2015年末に退社し、株式会社キャリアベースを設立し、新卒採用領域でビジネスを展開。
2018年5月会社売却後、9月にAll Personalに入社。FFS診断を活用した紹介事業やCANTERA事業を担当している。

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