組織を変えるグループコーチング

最終更新日:2020/07/06

Writing by:能登隆太

「組織変革」なんだか響きがカッコいいですよね!ただ、言うは易し行うは難し。

組織変革

この記事をご覧になるであろう経営者や人事の方は、この4文字を実現することがどれほど難しいかを日々痛感しているのではないでしょうか。
組織は個の集合体であり、状況に応じて柔軟に変化するダイナミックシステムとも言われます。よって組織の隅から隅まで精緻にデザインしようと思ってもうまくいきません。スーパーマンが一人いるだけでも上手くいきません。「水清ければ魚棲まず」とはこのこと。

ではどうするのか。多くの企業では人材要件の再定義、組織構造の再編、評価制度のアップグレード、給与制度の改定といった目に見える形での改革を行うことで組織に変化をもたらそうとします。

ですが、組織変革は制度によって実現されるのではなく、コミュニケーションの変化によって実現されます。もちろん、ハード面にあたる制度の改定は組織を変革する上では不可欠になると思います。組織の変革は社員の行動変革と同義であり、行動を変えるためにはこれまでとは異なる行動を評価する仕組み、そしてそのような新たな行動を推奨するような仕組みや文化創りが必要だからです。

ただ、もしソフト面であるコミュニケーションにも意識を向けることができれば、私たちはより早く、そしてよりスムーズに組織変革を実現することができます。なぜか。

いかなる組織も最終的には誰かと誰かとのコミュニケーションに行き着きます。そして1対1の関係が無数に絡み合い、「組織」というネットワークが形成されます。そう思うと「今、組織の中でどのようなコミュニケーションが行われているか」を見直す価値がありそうだと思えてきませんか?

組織が陥る罠

「三人揃えば文殊の知恵」と言われます。あなたの組織では1+1が2以上になっていますか? 1以下になってはいませんか? 何なら打ち消しあって0なんてことも・・・。
飛び抜けて優秀な個を集めても組織がそれに比例して強くなるわけではないことを私たちは知っています。

1972年に社会心理学者/アーヴィング・ジャニスが「グループシンク」を提唱してから約50年。この間、あらゆる人事領域の理論やフレームワークは進化してきたにも関わらず、どうすれば「三人揃えば文殊の知恵」を実現できるのかは解明されていません。

不思議なことに半世紀経った今でもグループシンクという重力から解放されるための術を知らないのです。結局は私たち人間は今も昔もほとんど変わっていないということなのだと思います。
そして、どんなに理論や技術が発展しても複数の人間が集まって形成される「組織」を扱うことはいつも時代も非常に難しく、だからこそ面白いのでしょう。

ではどのようにして私たちは組織を変革していけるのでしょうか。

組織の中心に問いを置く

どのようなビジネスでも必ずそのきっかけとなる問いがあります。

・顧客は今、何を求めているのだろうか?
・どうすればこの不便な環境を変えることができるのか?
・何をすれば利益をあげることができるのか?

このように私たちは日々無意識に問いを生み出しては答えを探し、それが全ての意思決定に繋がっています。「問い」が私たちをコントロールしているのです。無意識って怖い・・。

ですがこれを逆手にとったらどうでしょう? 問いが意思決定の方向性を左右するのであれば、あえて問いを切り出して質を高め、その問いを組織の中心において議論してみるのです。

なぜ問いを中心に置くのでしょうか。それは誰が言ったかで物事が決まるのかを避けるため、そして手法ありきにならないようにするためです。

組織変革を目的として経営幹部や人事で議論を進める時、よくあるのが議論が発散して中々進まないということです。
組織論に正解はありません。一方でそれぞれがこれまでの人生で自分なりにあるべき論を抱えているため、各自が好き勝手意見を述べ始めます。そして大体のケースで、本質的な議論をしきれないまま、社内の職位が上のいわゆる「偉い人」の意見が通ったりします。まさにグループシンクですね。

ですが、もし常に問いを中心として議論を進めることができれば、各自の発言がその問いに対する解として相応しいものなのかを判断できます。そこに職位も何も関係ありません。
あるのはただ一つ、その解が全員で共有している組織変革のための問いに答えられているかどうかです。加えて、共通の問いを中心に組織変革をリードする関係者で議論をすることで、徐々に目線合わせが可能となり参加者同士で目指すべき組織のあり様やカルチャーに関する解像度が高まってきます。

では、次に組織を変革するためには具体的にどのような問いを中心に据えるべきなのでしょうか。そして何に注意すればいいのでしょうか。

組織を変える問い

当然、どのような目的で組織変革が求められているかによって問いの性質も変わってきますが、例えば以下のような問いが考えられます。

実務的には、組織の状況を踏まえあるべき問いを設定し、関係者による議論を通じて問いに対する答えを共通認識化することを目指します。これをグループコーチングといいます。

①そもそも私たちは何のために組織変革を行うのか?
②私たち(自社)にとって理想的な組織とはどのような組織か?
③理想的な組織と今の組織を比較した時、最も大きなギャップはどこにあるか?
④それを埋めるために最初に着手すべきことは何か?
⑤逆に今から辞めるべきことは何か?
⑥組織変革を実現する上で障害になると想定されることは何か?
⑦どのような状態になっていれば組織変革が成功したと言えるか?

組織を変革する際、最低限これらの質問に対する認識は関係者内ですり合わせておくべきでしょう。

実際のグループコーチングでは、それぞれの問いに対して出てきた答えを更に掘り下げていきます。この段階で出てくる答えは抽象度の高いことが多いためです。例えば②の問いに対して出てきた答えが以下だとします。

「私たちにとって理想的な組織とは『失敗が許容されチャレンジが推奨される組織』です」

何となくイメージは湧きますが、このメッシュでは人によって解釈が異なりますし、具体的にどのようなコミュニケーションや文化、制度が必要なのか明確になりません。よって「失敗が許容される」状態やどのような「チャレンジが推奨される」のかを追加で質問していきます。

聞き手がありありとイメージできるような表現まで落とし込めて初めて具体的なアクションに移します。ここまで来れば、関係者間で認識がずれることはほとんどありません。あとは議論を通じて出てきたアイディアを実現化するためにアクションを起こすだけです。

また、それまでの議論の過程を議事録に記録し、関係者以外の社員に共有することで組織変革に対して理解を得たり、より戻しや反発を避けることも可能かもしれません。

一点だけ注意が必要なのは、できればグループコーチングを行う際のファシリテーターは組織変革の中心となる関係者以外が好ましいという点です。
関係者がファシリテーターを務めると私情が入り、適切な問いを設定したり、議論が脱線した時に修正することが難しくなります。かつ、問いの質に議論の質も大きく左右されるため、できれば問いを設定する能力に長けた「コーチ」経験のある人を設定することが望ましいと言えます。
(社外の人の方が「今は議論が脱線していると思います」といった指摘もしやすいですよね?)

まとめると、組織変革を実現するためには「問い」という共通の目標を関係者で共有し「議論」というコミュニケーションを通じて目線合わせを行う。そして出てきた答えを通じて具体的なアクションに移す。こんなサイクルを繰り返すことで、ハレーションが少ない組織変革をリードできるようになると思います。
あなたの組織では、どのような問いが中心に置かれていますか?

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執筆者

能登隆太

CANTERA3期卒業生。
新卒で伊藤忠商事に入社。入社後は人事・総務部配属となり、新卒採用・海外人事(駐在員処遇、出向対応、現地生活調査等)に従事。2018/7にHR Tech、データ活用組織を立ち上げ、その後全社研修企画も兼務。2019/7より全社で新設された「第8カンパニー」の人事担当を務める。

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