変化に強い「俊敏な組織」をデザインする秘訣

最終更新日:2020/07/06

Writing by:堀尾 司

「組織は戦略に従う」とは、歴史学者アルフレッド・D・チャンドラー Jr.の言葉で、邦訳書のタイトルにもなっている。経営に用いられる多くの用語と同様、「戦略」とはもともとは軍事用語からきている言葉だ。長期的、全体的展望に立った闘争の準備のことを指し、具体的な遂行策をたてる「戦術」よりも上位概念といえる。

織田信長と組織

戦国時代の日本における織田信長に例えるならば、「天下統一」が目的あるいはビジョンにあたり、どの国と手を結び、どの国と戦うかを描いた構想が「戦略」にあたる。そのうえで、戦う相手(国)を定めたならば、その国とどう戦うかという具体的な計画が「戦術」といえるだろう。

つまり「天下統一」というビジョン実現のための戦略を描いた後は、その戦略に沿った幹部武将を登用し、戦略どおりに攻めることができる体制をつくっていくことになる。組織づくりは国を主語にした際には戦術の一つといえ、戦略に沿って最適体制を組んでいくことになる。

さて、では「組織」とは何であろうか。様々な定義はあるが、堺屋太一氏の『組織の盛衰』には次の5要素が挙げられている。

組織の盛衰の5要素

1. 構成員がいる
2. 何らかの共通の目的と共通の意思が存在する
3. 一定の規範、倫理と美意識の共通性
4. 命令と役割が存在する
5. 共通の情報環境

この5要素を具備していても、組織形態としては様々な形がある。一般的に「機能別組織」「事業部制組織」「マトリクス型組織」「プロジェクト型組織」などがあげられるが、近年は「ホロクラシー型」「ネットワーク型」などさらに多様な形態も見られる。

あくまで形態を便宜的に分けた言い方であり、実際は戦略を実現するための最適な組織を、各社が工夫してつくりあげているものが組織形態といえよう。

なお、組織の形態は、中央集権的になったり、分権的になったり……というように揺り戻しがつきものである。たとえば友人3人で起業したばかりの組織はフラットな関係性にあったが、人が増えてきて階層・役割が分化し、機能別組織ができる。

さらに大きくなると、部門ごとの責任の明確化を求めて事業部制組織をとる。しかし行き過ぎた事業部制により部門間の壁が生じたため、全体最適をするために機能別組織に戻す、といった具合だ。

組織づくりが戦略実現の手段と考えれば、当然ともいえる。戦略は大局的に示されるが、取り巻く環境・状況は刻々と変わる。組織形態は常に変化を捉え、その中で最適なものにしていく必要がある。

変化するのは周囲の環境だけではない。人員構成を含む自社の保有リソースも変化する。理想的なのは先回りして変化をよみ、そこにあわせた組織づくりをしていくことだろう。そのために先行的な採用や登用をすることができるかどうかは、組織力強化にとって重要である。

一方、前述した堺屋氏は同じ著で、組織の陥りやすい課題も指摘している。

組織における追加要素

1.「組織を作る目的」と「作られた組織が持つ目的」が必ずしも一致しない
2. 全体の手段が部分の目的になる
3. 組織の目的と組織構成員の目的が異なってくる

こうした状態は大局的にも部分的にも頻繁に起こりがちだが、戦略を実現する組織になりきれていないというリスクのほかに、柔軟に環境変化に対応できなくなるリスクも抱えてしまうことになる。「組織は戦略に従う」ことを忘れ、環境変化を取り入れた柔軟な組織づくりではなくなってしまう可能性があるからだ。

そもそも経営は「環境適応行動」と指摘する学者もいるように、取り巻く環境に応じて戦略を定め、組織の体制をはじめとする戦術へと連鎖されていく。
変化を取り込むと組織にはコンフリクトがつきものであるが、変化を取り込まないと企業は生き残っていけない、ということを大前提とした際に、変化に先回りして対処しながら、大局的な視点で目的遂行を進める意識が重要といえる。

組織は“常に動的”だと思ってデザインすることが、実は戦略遂行の大きな一助になっていくのではないだろうか。アジャイルな観点での組織戦略や組織デザインが求められていると考える。

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執筆者

堀尾 司

CANTERA責任者 兼 講師
(株)All Personal代表取締役CEO 1973年北海道生まれ。1994年(株)リクルート入社。2004年ソフトバンクBB(株)入社。ソフトバンク通信事業3社を兼任し、営業・技術統括の組織人事責任者に従事。2012年グリー(株)入社。国内の人事戦略、人事制度、福利厚生、人材開発の責任者を歴任。2014年より東京東信用金庫に入庫し地域活性化に従事。
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