自己主張型人材の活躍と組織文化形成

Writing by:澄川寛

私は、業務でクリニックの事務長として採用・経営・人事の面で院長をサポートしています。そこで取り組んでいる自己主張型人材へのマネジメントについて、書かせていただきます。

「組織文化」は「勝手に出来る」よりも「目指してつくる」もの

組織を立ち上げ、退職と採用を重ねていくうちに、既存職員の中で「組織文化」が出来上がっていきます。

ここで注意したいのが、「どう組織文化を作るか」について考えることです。

規模が小さいときから意識しておかなければ、多くの場合「声が大きい人の主張によって勝手に出来上がった組織文化」になり、あとから軌道修正をしようとすると大変な労力がかかります。
ですから、「目指す組織文化」に向けて、誰に何をしてもらうか、ということを初期から考えて実施していく必要があります。

「声が大きい」自己主張型人材

創業時点から小規模の事業体の段階では、とにかく「声が大きい人」の影響力が非常に強いです(※もっとも、これは組織が大きくなっても、セクションごとで同様の課題が常に発生します)。

「声が大きい人」というのは、「自己主張が強い・積極的に発言する・発言力がある・組織にとって目に見える形で貢献をしている」などの要素を持つ人物です。イメージとしては、「トップ営業マン」「仕切り屋さん」「親分肌・姉御肌」などがあります。

これらの「声が大きい人→発信力が強い人」は、放っておいても自然と主導権を持ってしまう場合が多く見られます。こういったタイプの人物を「主張する人」「自己主張型」などと呼びます。
(※なお、自己主張型以外のタイプでは、例えば追従型・遊離型があります。追従型は相手の指示や反応を見ながら行動するタイプで、空気を読んで相手からの要望や指示に対応するタイプを指します。遊離型は積極的に他者と議論せず自己の内面で思考や計画をするタイプを指します。)

自己主張型人材の影響力を通して「目指す組織文化」を伝播することが望ましい

自己主張型人材は、多くの場合、仕事に対して意欲的です。彼らのエネルギーと行動の総量は非常に大きいので、社内では必然的に主戦力となっていきます。そして元々自己主張型の「発信力」は、「放っておいても発揮される」非常に強いもので、なかには「発信せずにいられない」という人もいる程ですから、これを活用しない手はありません。

自己主張型人材が悪影響を発揮するか、良い影響を発揮するか。組織文化の面からみても、これは非常に重要な分岐点になります。
そこで、とくに自己主張型人材には、明確に入社時点から「目指す組織文化についての教育」を施し、ぜひその発信力をもって長期的に組織の強化に貢献して頂きましょう。

自己主張型人材をマネジメントする際の注意点

「自己主張型」の人材は、自分の存在価値を確立することに強い意欲を持つため、「有能」という判定を得るうえで精力的に組織貢献を行います。業務知識のキャッチアップが早く、自分から進んで業務を行うので、その能動性・積極性を買われて、早くから「リーダー人材として自分でどんどん業務を進めてくれ」と上司の手を離れて活動を最大化することを求められます。

一方で、発生しがちな課題も複数あります。

まず、自分の弱みを見せることに抵抗があることが多く、社内でのポジションや実力が確立できていない時期には、きちんと遂行出来ていない仕事でも「出来ている」と言い張ったり、自己の有能性を証明しようとアピールに躍起になったりして、周囲から鬱陶しがられるケースなどが見られます。

また、有能であるが故の他者への要求水準の高さ(自分が当然できることは他人もできて当然)や、成果を求めて結果に向けて強引なアプローチをとる(結果が全て)場合も多く、周囲のメンバーとの役割分担やペースの違いなどで、軋轢を生むケースが多々見られます。

例えば、売り上げ至上主義から無理筋な注文を受けてしまい、「自分の成績は売り上げをあげることなので、その他の業務は各担当が責任をもってやって貰わなければ困る」「こんなこともわからないのか」「これくらいできて当然なのに」などと言ってしまえば、周囲との関係はどんどん悪くなります。

その他では、個別面談などでも、「自分はこれだけやっているのに、なぜ周囲と同じ扱いなのか/評価が低いのか」といった訴えが多い傾向もみられます。本人は自分が会社に貢献をしていることを評価してほしいわけですが、「自分が軋轢を生んでいることで会社や他のメンバーにコストが発生している」ということまで認識する(あるいは「自分のマイナス影響が発生している事実を受け入れる」)ことについては一様に苦手な傾向があります。

こういった傾向を放置すると、いずれ組織内で「自己主張する人」VS「自己主張しない人」の構図が自然と出来上がり、衝突が起きます。これを解決できないと、やがて「職員の間で不平不満があふれ、改善の見込みがなくなり、さらに不平不満がたまる」というマイナスのスパイラルに陥りますので、注意が必要です。

自己主張型人材に活躍して貰うためのアプローチ内容

自己主張型人材に活躍してもらうためには、本人の役割と評価基準を明確に示し、認識のズレをなくすことが重要です。そこで、これらのポイントを共有するようにしています。

1.会社と部署が置かれている状況および目指す組織文化を共有する
2.「目指す組織文化の体現と他メンバーへの伝播」を評価に加えることを宣言する
3.求める「期待役割・ゴール」と「評価基準」をしっかりと話し合う
4.他メンバーとのオープンコミュニケーションを定期的に実施する

当然、それぞれのポイントの目的を踏まえて話をします。

1.会社と部署が置かれている状況および目指す組織文化を共有する・・・経営陣・部門責任者が、しっかりと時間をとって「当人を尊重している事実」を示しながら、目指す組織文化について説明します。
2.「目指す組織文化の体現と他メンバーへの伝播」を評価に加えることを宣言する・・・「目指す組織文化に即した行動かどうか」+「他メンバーとの関り方によって、どのように自分の評価が変動するか」という視点を、最優先事項として当人の思考にインストールします。
3.求める「期待役割・ゴール」と「評価基準」をしっかりと話し合う・・・実現した「姿」まで具体的に話し合うことで、当人が「セルフプロデュースすべき自分」のイメージを固められるように支援します。(「評価される自分」が明確にイメージできることが重要)
4.他メンバーとのオープンコミュニケーションを定期的に実施する・・・当初は週1回~2週間に1回程度が望ましいです。ここで「否定無し、批判なし」の心理的安全性を担保して会話の機会を持ちます。これにより、単純な距離を詰めるだけではなく、自己主張型と追従型や遊離型で目の付け所や価値観の違いをお互いに学習し、コミュニケーションの精度を上げることを目的とします。

パーソナリティに応じた活躍のプロデュースを

今回は、事業所立ち上げにあたって、自己主張型の人材に対して、どのような意図をもって関わっているかの内容を書かせていただきました。
自己主張型の人材は、責任感が強く、成果に対する意欲も貪欲で、適切な関係を築くことができましたら、とても頼もしいパートナーです。そして、「発信すること」に高い能力を発揮してくれます。

だからこそ、彼らが正しく目指す組織文化を理解し、他のメンバーに発信し続けてもらうことで、会社としてより早く目指す場所にたどり着けるのではないかと思い日々行動しております。

お読みいただきました方に、少しでもお役に立つところがありましたら幸いです。

補足:当記事で記載した「自己主張型」「追従型」「遊離型」というタイプ分けは、もともとエニアグラムという性格類型分析に出てくる言葉ですが、当記事上では「行動傾向のイメージ」から想起したもので、純粋にエニアグラムでの分類を指すものではなく、あくまで表面上の行動を表したものです。
あらかじめご了承ください。

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執筆者

澄川寛

CANTERA8期卒業生。
EC系ベンチャー立ち上げ参画→リクルートキャリア→電子カルテベンダー営業所責任者等を経て、株式会社リソーシズを創業。医療業界で経営コンサルタントとして活動し、事務長として複数の医療機関で経営支援を行っている。
人事コンサルティングでは、主に人間関係トラブルやマネジメント問題に対応。性格類型分析のエニアグラム心理学をベースに経営層/メンバー間の認識ギャップや意思疎通の改善を行い、その後は中長期で組織が活性化するよう、人員体制見直しや管理・教育制度の支援を行っている。

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