組織風土の理想と課題の溝を埋め成功を実現①

最終更新日:2020/07/14

Writing by:上川 宙士

組織の中にいる構成員が「ふとした時にとる行動」にあらわれる、企業独特の様式はどの組織にもあると思います。これを「組織風土」と呼びます。本記事は組織風土に関してその概念と作り上げられるプロセスについて述べてまいります。

部門の中で当たり前になっていること

自社に電話がかかってきた時「電話がなったら1コールで受話器を取る」「電話に出た時はありがとうございますから、そして自分の名前を告げること」というように部署や部門にはルールがあります。

ウチのメンバーは皆やっている、顧客を相手にするサービス業なのだから当たり前のことだ。とお思いになられる方もいらっしゃると思います。素晴らしいと思います!
反対にウチは正直3コールくらいなりっぱなしだ、新人以外電話は取らない。経営に響く問題でもないから些細な行動を意識することはない、その状態も正直あるでしょう。
上記のような組織の中の人が取る「行動」の積み重ねで出来上がる概念が「組織風土」です。

組織風土が経営(主に成果)にどう影響するのか。本記事を通じて自社の組織風土が経営に及ぼす影響を分析する一助となり、良き方向に改善が進むことに貢献できればと思います。今回は組織風土に関してその概念と作り上げられるプロセスについて述べてまいります。

組織風土とは

組織風土とは「組織の行動様式、行動規範」と言われています。「その場合、ウチの会社ならこうする」同業者や異業種の方との会話の中で聞くフレーズではないでしょうか。
組織風土は「組織文化」と混同されることもあります。経営学の分野では「組織風土」と「組織文化」の区分が明確に定まっていない状態とも言えるようです。
とは言え異なる言葉がある以上、意味を明確に分ける方が本質の理解のために重要と考えます。

・組織風土は上述の通り「行動」の積み重ねで出来上がった様式や規範。
・組織文化は経営理念が持つ価値観と組織風土の蓄積により出来上がった考え方や価値観。

上図は組織風土に影響する概念を表しています。組織風土はある日いきなり出来あがっている様式や規範ではありません。

まず経営理念や外部環境が「戦略、組織、制度」を構築します。組織は戦略に従い「行動」します(組織の大きさや能力によっては描いた戦略を実現できないケースもあるので、その場合は「戦略は組織に従う」形となります)。
組織は戦略(外部環境の影響も受けている戦略)に基づく行動(経営理念に基づく文化の影響を受けつつ)により、成果を積み重ねていきます。それにより成功と失敗という結果が生まれます。
組織は成功のプロセスを学習し再現力を得ることができます。また失敗から成功確率の高い行動を以降は実行することになります(失敗から学習することを前提とします)。
成功と失敗を蓄積することで「こうするべきだ」「こうした方がよい」という行動様式や行動規範が組織に根付くことになります(その中で一部は制度(ルール化)される要素も生まれます)。
そして行動様式や行動規範は組織文化に内包され、新しい組織文化を生み、戦略と組織へフィードバックされ、戦略のオプションの増加の実現や組織の実行力を高めます。

組織風土は、企業理念から成果に至るプロセスと、そのプロセスを取り巻く概念の間に影響し続けることになり、「原則」組織に好循環をもたらすこととなります。

組織風土が作られるプロセス

では組織風土を形作るプロセスについて確認していきましょう。

組織風土は、組織の行動の蓄積により生まれるので、企業が誕生した瞬間には原則としては存在しません。企業誕生時に組織風土らしきものがあるならば、それは設立メンバーの行動規範で、新しい組織での成果に基づく規範ではないので、厳密には組織風土とは言えないでしょう。

組織風土は経営理念、戦略、制度に影響を受けた組織行動の蓄積により生まれます。組織行動を分解したものが下図になります。

行動の背景にある意思決定の影響を受けて組織風土は作られます。
「政治」「経済」「法律」「情報技術」などによる外部環境やその環境の変化に 影響を受けた意思決定。事例を挙げて申し上げれば、

・「緊急事態宣言(政治)」による本社への通勤の制限がかかったことにより、業務に支障が発生すると考えられた。
「Zoom(情報技術)」に代表されるオンラインコミュニケーションシステムを活用することで、支障が軽減される。自宅で業務可能となるよう、制度の改訂と合わせ業務システムを改修しよう(行動)。というような文脈になります。

その他には、
・異業種や競合の参入を許すことにより、遺憾ながら販売価格を下げて販売せざるを得ない状況を作ってしまった。顧客には値下げして販売する(行動)。

・大型プロジェクト実行の為、大手銀行数社からそれぞれ数百億円の借入れを実行した。運悪く世界の景気が悪化し、自社の各事業ポートフォリオはどこも大きな打撃を受け続けている。その為現預金の用途は1年分の運転資金と決定した。新たな負債を抱える事を今年度は凍結された為、かねてより計画していた設備投資が出来ない(行動)。
※自社の経営資源状況を鑑みた意思決定(社債発行や株式市場からの調達などの細かいオプションは事例からは省きます)。

・自分には競合他社の社員のような課題発見能力も、提案能力も、価格交渉力も無い。だがこの商談は絶対落とせない。本来であれば自己研鑽して臨むべきだが、期限も限られているので、我が社のエース社員である先輩の力を借りねばならない。上司にその決裁をもらいに行かねば(行動)。

・ウチの会社は1000万円以上の受注に関しては、暗黙の了解で契約締結時に社長を連れて行かないといけないんだよな。お車の手配もしないといけないし、先方役員との会食も(こちらのしきたり的な都合なのに)セッティングしないといけないし、面倒くさいなぁ。。。

これらが、行動に影響を及ぼす要素(背景)一例です。適切な環境分析により成功に導いた事例。逆に環境分析の精度が低かった為に競合の参入を許してしまい、それに対応した行動を取らねばならない事例。予定していた投資用資金が確保できないことによる新規投資の停止という意思決定の事例。難易度の高い商談をどう勝ち取るか考え抜き意思決定した事例(自分の手柄よりも会社全体の手柄を考えた)。企業文化の悪しき側面による無駄な作業を実行することによるモチベーション低下による他の業務への支障という事例。

大事なのは「成功に導いた思考は何か?そして他の部門でもその思考を活用して成功に導けるよう、思考を再現性のあるものにしていくか?」という考え方を持ち行動に結びつけることでしょう。

合わせて失敗した原因は何か?環境分析、情報収集は求められる水準で(誰の基準?定量的には?も含めて)出来ていたのか?他に代替策は無いのか?「社長!あなたがトップセールスとしての機能を果たせないで何をやっているのですか!?」と諫言できる職場環境ではないのか?
 などを限られた時間内に徹底的に分析し改善できる能力を養うことも大事です。それにより成功と失敗が組織の無形資産となっていくことでしょう。その蓄積は唯一無二の価値を持つ自社の武器になります。

成功事例の再現性を担保したり、他部門へ水平展開したり、失敗の原因を突き止め、明日からの業務の効率を上げる努力をする。
それにより選択すべき行動が蓄積され「正しき組織風土」が醸成されると考えます。これをお読みになっていただいたことをきっかけに、ウチの会社に正しき組織風土はあるだろうか?と振り返られることをぜひお勧めします。

次回は組織風土が生み出す影響、あるべき姿と課題のギャップを把握し、成果につなげる事について述べて参りたいと思います。

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執筆者

上川 宙士

CANTERA ACADEMY6期卒業。

オートリース⇨人材紹介⇨イベント運営⇨人事周りへの商材を経験。
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CANTERANOTEの裏方として少しお手伝い。

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