さくらインターネットの人事ポリシーと私のマネジメント

最終更新日:2020/06/28

Writing by:矢部 真理子

「社員を信じる」マネジメントの役割は、メンバーの強みを引き出し、自己肯定感をあげ、幸せにすることなのではないでしょうか。そう考えれば、マネジメントは喜びに満ち溢れた仕事になります。

さくらインターネットの人事ポリシーは「社員を信じる」

さくらインターネットでは2014年以降、社内の組織体制や人事制度の見直しに着手してきました。それまでは、効率化、原価削減など、社員を管理し、働かせる観点に基づき管理をするのが人事部の役割でした。

私が当社に入社したのは2012年9月、当時は、水曜日はノー残業ディでしたが、定時過ぎても就業している社員がいないかどうかを、人事部がフロアをまわり注意喚起を促すなど、現在では考えられないような仕事もしていました。

人事ポリシーを策定する直接的な引き金となったのは、2015年に実施した社内調査でした。外部機関に委託して行なった、社員の“働きがい”に関する調査。人事部のメンバーは、その結果に焦りを覚えます。

私たちの予想をはるかに下回る結果でした。『総合的にみて、働きがいのある会社だと言える』と回答した社員は、54.6%。この調査結果が思わしくなかったことで、人事制度、働き方、コミュニケーション、マネジメントなど人事課題に対する議論が活発化していきました。

当時、さくらインターネットの社内にはさまざまな課題がありました。仕事の効率化を求めるあまり、蔓延するようになった余裕のない空気。多様なライフステージにさしかかる社員が出てきたことで、不足が目立ちはじめた社内制度の柔軟性。そうした課題を解決していこうと取り組みを進めていた矢先のこと。働きがい調査の結果がひとつのきっかけとなり、人事部主導で人事ポリシーを策定することになりました。

役員・人事満場一致で生まれた人事ポリシーは「社員を信じる」こと

これからのさくらインターネットに、必要な制度はどんなものか。新制度をつくるにあたり、人事部だけで考えるのではなく、社長以下役員全員を巻き込んだワークショップを開催しました。人のことを、ここまで真剣にディスカッションしたのは創業以来はじめてのことでした。

ディスカッションを重ねた結果、当社としての人事ポリシーが明確になります。それは「Y理論」にたつことであり、「社員を信じる」スタンスを貫くということです。参加したメンバー全員の意見が一致した結果でした。
※X理論・Y理論とは、マクレガーによって提唱されたモチベーション理論。
「人間は生来怠け者で、強制されたり命令されなければ仕事をしない」とするX理論と、「生まれながらに嫌いということはなく、条件次第で責任を受け入れ、自ら進んで責任を取ろうとする」Y理論とがあるとその理論を構築している。

この人事ポリシーのもと、人事部では、のちに働き方改革に取り組み、でき上がった制度が「さぶりこ」です。「さぶりこ」という名称は、“Sakura Business and Life Co-Creation”を略したもの。2016年10月、正式に社内で運用しはじめました。「さぶりこ」制度も「社員を信じる」と「Y理論」をもとに作られた制度です。社員を管理するのではなく、社員は基本的にまじめに働くのだから必要以上に管理しなくてもいいという考えに基づいています。

現在は、 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に備え、2020年3月2日から原則リモートワークに移行し、今後も、人事ポリシー「社員を信じる」に基づき、リモートワークを前提とした新しい働き方に向けた準備をしています。

「社員を信じる」マネジメントはメンバーの強みにフォーカスできる

さて、人事ポリシーによって私のマネジメントがどのように変化したかの話をします。

「社員を信じない」前提でマネジメントを考えると、働かない社員を働かせようと管理をし、強みではなく弱みに、出来ている面ではなく出来ていない面にフォーカスし、管理監督することがマネジメントの仕事になります。

私もかつてはメンバーの弱みにフォーカスし、弱みを克服するマネジメントをしていた頃もありました。その頃の自分を振り返ると、提案書のこの箇所が気に入らないとか、小さなミスや失敗を指摘し正すことがマネジメントの役割だと躍起になっていました。

当時の私は、マネジメントはつまらないし向いていない、出世をするのは辛い修行をするものだと思っていました。それでもメンバーが成長すればマネジメントをする意味もあるのですが、怒っている上司の話を聞いているメンバーはだいたいが思考停止に陥っています。

結果として、メンバーの弱みの克服はおろかモチベーションを下げ、自分自身も辛い思いをしていました。

かたや、「社員を信じる」にたちマネジメントをする場合、メンバーは誰しも可能性に満ち溢れており、お客様・社員・社会に対して貢献したいと思っているとの前提に立ち考え、行動をすることができます。

仮に活躍できていないメンバーがいても、勇気が挫かれているだけだと思えるようになりました。私が関わり方を変えることで、結果としてメンバーが自分で気付き、意識し、行動が変わるであろうと思えるようになったことは、私がマネジメントを実践する上でとても大きな変化となりました。

その中でも特に大きな変化は、メンバーの弱みではなく強みにフォーカスするようになったことです。
自分の強みを理解し、強みによって何かを成し遂げた経験は自己肯定感につながります。

内閣府が調査した、 平成26年版 子ども・若者白書(概要版) 「特集 今を生きる若者の意識~国際比較からみえてくるもの~」によると日本の若者は諸外国と比較し自己を肯定的に捉えている者の割合が低い結果がでております。

自己肯定感とは「私もOK、あなたもOK」の状態のこと。自己受容と他者受容を同時にできているので、周囲を仲間だと思え、チャレンジや、やりたいことに積極的に行動することができるのです。
■出所
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h26gaiyou/tokushu.html

新卒社員向けの研修で「自分の強みはなんですか?」と聞くと、ほとんどが手を挙げることができません。

ピーター・ドラッカーの有名な言葉のひとつに「人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。強みに集中し、卓越した成果をあげよ。」というものがあります。

「社員を信じる」マネジメントの役割は、メンバーの強みを引き出し、自己肯定感をあげ、幸せにすることなのではないでしょうか。そう考えれば、マネジメントは喜びに満ち溢れた仕事になります。

このように、人事ポリシーとは、ビジョンやミッションを実現することを目的に、組織や人に対する企業組織の取組みのあり方や方向性を指し示したものです。組織や人に対するあり方や方向性が定まれば、経営も人事も迷いがなくなり、人事ポリシーを基に、自立して考え行動することができるようになるのではないかと思います。

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執筆者

矢部 真理子

CANTERA3期修了。
新卒で製靴・製鞄会社に就職し、その後、気象機器メーカーにて営業や秘書に従事。前職の株式会社トライアンフにて約7年間、様々なお客様の採用企画・運用、教育研修企画などに携わる。
2012年よりさくらインターネット株式会社人事部に所属。 現在は「社員が幸せに働ける会社は業績が上がる」ことを現職で実現するため、人・組織で事業に貢献するための人事業務全般に従事している。

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