人材育成にエニアグラム ①

最終更新日:2020/07/06

Writing by:澄川寛

私は過去にリクルートグループの企業に在籍していたこともあり、自社内の研修や顧客企業の選考で適性試験を利用している場面に遭遇してきました。

はじめに

私が受けた例としては、SPI試験やSTAR研修などがありますが、このほかにも、世の中には星の数ほどの適性検査や検査結果に基づく研修があります。そして、数多くある適性検査も内容は様々で、「どの適性検査が正しい、間違っている」ということもありません。人事として採用選考・第三者評価の把握・マネジメントなどを行う際に、人物の特徴や思考、考え方の傾向を捉えるうえで、これらの診断や研修がとても有効であることは疑いの余地はありません。また、「他人からどう見られているか?」を把握して、自己認識とのギャップを埋めることも、非常に価値のあることです。そこで自己変革をやりきることは、ビジネスパーソンとして素晴らしい能力だと思いますので、これからも様々な職場で活用されていくものと思います。

適性検査は、個人の成長に活用できていますでしょうか

しかしながら、当時の私は、いちメンバーとして、性格診断と研修の結果をうまく自己成長に生かすことができませんでした。そういった中で、上司や同僚から研修の判定結果に沿った成長を求められると、自己変革をやり切れないまま、自己変革をしたように演技をしなければならないように感じたのです。しかし、演技をしながらパフォーマンスを発揮できるほど有能ではなく、研修の効果を十分に生かすことはできませんでした。適性検査の結果をうまく活用できず、むしろ行動と成長にブレーキをかけてしまったのです。

エニアグラムとの出会い

そういった時期を経て、自己の行動変革に非常に効果が高く、目からウロコの性格類型分析に出会いましたのが、ここでご紹介するエニアグラムです。エニアグラムは、他の適性試験や性格分析と異なり、「自己理解と自己変革」をとことん追求する性格分析でした。私にとって、他者から判断される適性検査の結果で自分の行動を変えるよりも、自分で自分の弱点に納得して行動をコントロールできることのほうが、ずっとストレスなく実践できることでした。そして、エニアグラムを学ぶなかで、他のタイプの人々の思考や生の声に触れ、やっと自分がどうすれば他の人とのコミュニケーションで成長できるか、またアプローチの仕方を工夫することで双方が納得する着地点を探しやすくなりました。

エニアグラム(enneagram)「ennea」が数字の9、「gram」が図を表します。

エニアグラム性格類型診断

エニアグラムは、その起源については明確ではなく、通説では2000年前から存在したようです。その後、スタンフォード大学での研究などを経て、1970年代の中ごろには、現在のような体系で運用されるようになったようです。日本では1980年代後半に鈴木秀子先生が初めてエニアグラムを紹介し、以後、日本国内の第一人者として活動されています。

シスター鈴木秀子 official web site
http://www.srsuzukihideko.com/profile.html

また、私自身は日本エニアグラム学会に所属しております。こちらのページから簡易回答診断が可能ですので、試したい方はぜひどうぞ。

日本エニアグラム学会 90問回答式チェック
https://www.enneagram.ne.jp/about/diagnosis/dns01

導入している企業はどのような先でしょうか

このエニアグラムについては、スタンフォード大学で研究され、Google、Apple、IBM、Amazon、ソニー、トヨタなど錚々たる企業で導入されています。実際、上記の企業内で役職者であった方にお伺いしました際には、「エニアグラムの研修あるよ。数日間、管理職のみで宿泊研修を行い、とことん理解を深めている。」というお話も頂きました。

どういった分類を行うのでしょうか

9つの性格タイプに分類されます。ここでは、エニアグラム研究の第一人者であった、故ドン・リチャード・リソ氏の定義した名称と日本語訳名称を記載します。

タイプ1 改革する人 The Reformer
タイプ2 人を助ける人 The Helper
タイプ3 動機付ける人 The Motivator
タイプ4 芸術家 The Artist
タイプ 5 考える人 The Thinker
タイプ 6 忠実な人 The Loyalist
タイプ 7 万能選手 The Generalist
タイプ 8 統率者 The Leader
タイプ 9 調停者 The Peacemaker

これらのタイプは、それぞれに生まれながらの「囚われ」という概念があり、その囚われに少なからず影響を受けながら行動しています。日常生活しかり、危機対応しかり、恋愛時の行動しかり。そしてそれらの行動の積み重ねが、無意識のうちに自分の人生を形作ってきた人間性であり性格の自己認識を構成していることを知ります。
エニアグラムを学ぶことで、自分の「気質(きしつ)」に目を向け、自分の性格や考え方の癖を受け入れることで、自己成長を手助けします。また、自己の内面を知り、他者の内面が異なることを知ってはじめて、「自分と他人で見えている景色、物事の感じ方、行動を決める際の考え方がこれほど違うものか」「自分は毎日毎日、いかにタイプの囚われに振り回されていることか!」「ほかの人もタイプそれぞれに、こんなに振り回されているのか!」と気づくことができるのです。

エニアグラムの活用について、ドン・リチャード・リソ氏はこう言います。

———-ここから引用———-
エニアグラムを使うべき分野は、大きく二つある。まず、自分を理解すること(自分自身の中でなにを変えるべきか知ること)、次に、他人を理解すること(自分が他人ともっとうまくつきあえるようになるために)である。

なぜなら、人間性は(そして私たちが自分たちに付きまとう数々の問題を解決する必要性も)変わっていないからである。エニアグラムは、私たちの恐れと欲望、強さと弱さ、自己防衛と不安、私たちが挫折や失望にどのように反応するか、そしてもっと前向きな意味では、誤った判断や幻想の上にではなく、自分たちがよって立つことができる真の能力や最高の力を、私たちが理解する手助けをしてくれる。

私たちはみな、他の人も基本的に自分と同じだと思いがちなので、タイプが異なれば考え方も、感じ方も、反応の仕方も異なるということがわかれば助けになる。性格のタイプを理解するより、本当の自分としてあり続けながら、他人と深く結びつき、他人をもっと客観的に見ることができるようになる。
———-ここまで引用———-
(ドン・リチャード・リソ 性格タイプの分析 P.8-9より引用)

このように、エニアグラムは、「自己の内面を理解し受け入れることで、他者とより深く結びつく」ためのツールとして活用できます。マネジメント層の人材がエニアグラムを学ぶことで、マネジメント能力を向上させ、メンバーそれぞれにとって受け入れやすい指示やコーディネートをできるようになれば、組織内での意思疎通がスムーズになり、メンバーの活躍や業績向上、定着率の向上などにも大きく貢献するものと考えますので、ぜひご検討されてはいかがでしょうか。

エニアグラム導入の注意点

エニアグラムを導入する際には、経営者・人事担当・部門長/マネージャーに注意が必要です。下記の内容について、エニアグラムの専門家に相談したうえで導入をされることをお勧めします。

①「タイプは本人が納得するまで決めつけない」・・・エニアグラムで最も重要なのは自己のタイプ認識ですが、このタイプを当初に誤認(ごにん)してしまうケースが非常に多いです。ワークショップに何十時間も参加していた人でも、気づいてタイプの認識を修正する場合が多々あります。ですから、最初に判定したタイプでも、本人が納得していなければタイプの要素を押し付けてしまわないように注意が必要です。「自分の内面の目を背けてきた部分」に目を向ける学びですので、慎重に対応する必要があります。

②「安心・安全の場を担保する」・・・エニアグラムのワークを行う場合、各参加者が話す内容は、お互いにその場限りの情報として扱いましょう。ワークの中で過去の喜びや苦しみ、辛かった体験を話すのは、あくまで相互理解のために行うものです。別の場で話題を蒸し返したり、ネタにすることは、研修としても職場としても、心理的安全性を破壊する行為になります。マネージャーのマネジメント能力向上にも、メンバーのパフォーマンス向上にも、百害あって一利なしですので、事前に参加者にしっかりと念を押すアナウンスをしておくことをご注意ください。

長くなりましたので、今回はここまでとさせていただきます。次回はタイプ別の傾向について書いてみたいと思います。9つのタイプは、それぞれが特徴を持っていて、まさに「別のタイプ」に向けたマネジメントの重要性を感じていただけるかと思います。次回もどうぞよろしくお願いいたします。

長文にお付き合いくださりありがとうございました。お読みくださった方々にとって、少しでもお役に立ちましたら幸いです。

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執筆者

澄川寛

CANTERA8期卒業生。
EC系ベンチャー立ち上げ参画→リクルートキャリア→電子カルテベンダー営業所責任者等を経て、株式会社リソーシズを創業。医療業界で経営コンサルタントとして活動し、事務長として複数の医療機関で経営支援を行っている。
人事コンサルティングでは、主に人間関係トラブルやマネジメント問題に対応。性格類型分析のエニアグラム心理学をベースに経営層/メンバー間の認識ギャップや意思疎通の改善を行い、その後は中長期で組織が活性化するよう、人員体制見直しや管理・教育制度の支援を行っている。

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