リモートワークと労働生産性を考える②

最終更新日:2020/07/14

Writing by:上川 宙士

前回の記事(リモートワークと労働生産性を考える①)では企業文化と企業風土、企業の透明性、コミュニケーションについて生産性向上との関連を述べて参りました。本稿ではリモートワーク環境のもとでの動機付け、ストレスへの対処、マネジメントについて生産性向上との関連を述べて参ります。

リモートワークが動機付け(やる気)につながるのか

結論は「人により異なり」ます。
仕事を趣味のようにやりがいを感じられる人は、都度都度プロジェクトに参画する意識で仕事をしています。そのような方はリモートかどうかはそれほど影響しないでしょう。ただし「ライスワーク」として仕事を取り組んでいる人の中には「監視する上司」がいないとなると、元々仕事に対する意欲や熱意が低い状態をさらに加速させてしまう人がいるかもしれません。
※本稿においてはやる気がある人を前提に考えていきたいと思います。

従業員のやる気の違いで企業全体の生産性が大幅に変わります。効率のよいやり方や新たなアイデアは、本人がどう表現するかは別としてもやる気がある人から生まれると考えます。どのような施策が取り組まれているか見て参りましょう。

1.社員のやる気を下げない施策が大事
元来フルフレックスを敷いていたとある企業では、オンライン会議でメンバー各自がタスク共有を実施していると伺いました。各自の仕事ぶりや悩みも共有して心のケアも同時に行い、安心感の醸成をしているようです。

2.エンゲージメントの向上に向けて
コロナ禍後、毎月リモートワークによる生産性に関する質問を社員向けに実施した企業があります。生産性は86%の社員が同等以上の水準との回答をし、チームとしては96%が同等以上の回答となったそうです。生産性が下がった理由は個人差がありますが、家族や家でのオフィス環境によるもののようです。

3.エンゲージメントを可視化する
社員向けに3ヶ月ごとにサーベイを実施している企業のお話を伺いました。
その企業ではエンゲージメントは向上しているとのことです。要因としては、直属のマネージャーとのコミュニケーションの質と量が上がったからとのことでした。具体的には、1on1においてマネージャーによるメンバーへのケアの推進が奏功。前提としてボトムアップのカルチャーがあるからとのことです。その企業は施策の8割がボトムアップの意見が採用されているとのことです。

4.仕事のやり過ぎに注意
サボるリスクよりもやりすぎ問題が発生しないかも注意する必要があります。リモートワークにおいても出退勤管理はしっかり行いましょう。

閑話休題:メンバーの怠惰について考える
「怠惰が発生する原因=仕事がつまらない原因」を突き止めることも大事です。怠惰にならぬようマネジメントするのではなく、仕事に面白みを感じられない原因を突き止め、それを解決することが重要です。表面的な改善のためのマイクロマネジメントは、意欲がマイナスになっている状態を「恐怖」をもとにゼロの状態にまではできるかもしれませんが、プラスにはすることはできないでしょう。そして根本原因を突き止めず実行する施策は良い結果を生むとはなかなか考えられません。

リモートワークによるストレス対策について考える

ストレスが生産性にどのような影響を与えるのか考えてみましょう。

1.そもそもリモートワークは生産性を上げるための「最高」の手法ではない
生産性に大きく影響する要素として、ストレスが大きな原因と考えられます。以下がストレスの要因と考えられます。

1)移動(満員電車)
2)人間関係
3)強制ルール
⇨今までストレスであったものが強制リモートワークにより浮き彫りになりました。これらを課題とし、どのように解決していくかという思考が企業(人事)は大切です。

2.ストレス耐性のあるメンバーを採用する(根性論ではない)
採用の段階からリモートワーク環境がストレスにならない人を採用することも重要です。顔を合わせないことが失礼にならなくなったので、顔を合わせるストレスもなくなり生産性が上がったという声も一部にはあるようです。

3.職住近接によりストレスを解消する
仕事内容に適した地区を職場にすべきであるという経営者の方の意見を伺いました。例えばゲームを作るのであれば秋葉原、など。合わせて近隣地区に住んでもらった方が採用のアドバンテージにもなるようです。
現在では本社との2駅内に住むことで住宅手当を支給する企業も多いと聞きます。企業としては交通費も社員のストレスも下がり、住んでいる街と企業をメンバーが好きになれば、結果就労満足度も上がりやすくメリットを享受できる可能性が高まります。

4.ストレス軽減のためにオフィスが対応していること
メンバーの心理に安心を与えることを目的として、ウィズコロナに際してオフィスも改装したとおっしゃる経営者の方もいらっしゃいました。働くおもしろみや、企業に行きたくなるような改装を実行したとのことです。設計に社員が関与することで結果社員に主体性を持たせることもできたそうです。

5.既存社員へのケアについて
コロナがメンバーに与えるものは心理事象です。心理的に蝕まれている人が増えている可能性があります。
コミュニケーションを密にし社員の情報を吸い上げることに注力している企業もあります。1on1が支障なくできるカルチャーがあると、不具合が生じた社員の情報が入ってきやすいそうです。

6.ストレス耐性の異なる社員への対応
家庭環境による変数はキリがないので、一人一人と向き合うしかありません。とにかく様々なコミュニケーションを試すことが大事です。

7.研修やケアの事例
社員の家庭環境が原因となるストレスの内容は異なります。ストレスの内容は複数。GW期間中でも社員とコミュニケーションをするベンチャー企業もあるようです。メンタルヘルステック企業を活用し、どんな不調がメンバーに生じているのか企業としてストックしておくのが重要です。

8.リモートワークによる体調不良に関する課題と対応
まずは普段からのヒアリングが大事です。急にはメンバーの情報を拾えません。メンバーが発信しやすい雰囲気を構築することが大事です。それができている企業はメンバーが自分で不調を申し出やすいのです。人力でカバーするのは難しい規模であればツールを使い仕組み化し、メンバーが使いやすい運用が有効です。

リモートワーク下の望ましいマネジメントとは

リモートワークにより、マイクロマネジメントの代表格である事務所での従業員の監視が難しくなりました。ルールや監視で縛っていた企業や経営者は、メンバーのやる気を源泉にした生産性の維持や向上が難しくなる可能性が高くなりました。社員を自分の枠の中でのみ管理する方法に固執するのではなく、彼らが楽しく仕事をしてもらうにはどうすればよいかを考えるべきであります。
その前提として何のために仕事をしているのか言語化することも大切です。マネジメントは「仕事をうまくやる(やってもらう)」こと。結果生産性の向上。マネジメントを蔑ろにする企業はそうでない企業に今後大きく差をつけられるでしょう。

1.マネジメントに求められる技術
言語化されていること、一貫性、心理的安全による信頼関係をマネジメント実行の前提として、マネジメントに必要な3つの要素が存在します。
1)ビジョン、ロードマップを土台としたアクション
2)推進力向上やPDCAの高速回転
3)アウトプットの最大化(生産性)

2.マネジメント力が問われる
自社はメンバーに心理的安全を提供できていない企業である可能性はございませんか。マネジメントする側はメンバーが自分の思い通りに働くことが当たり前と考えていますと、新たな環境に対応できない恐れがあります。
部下を持つ方はマネジメントの前にまずはメンバーの心理状態を理解をすべきでしょう。そして今まで行ってこなかったマネジメント手法も実行する必要があるでしょう。マイクロマネジメントに代表される性悪説を前提としたコミュニケーションを実行したままの場合、コロナ禍と言え貴重な人材の自発的な離脱が加速してしまう危険があるので注意です。

3.マネジメントする上で優先順位が高い内容
まず経営層とマネージャーはすべきことをメンバーに約束しましょう。経営者の発信と実務に整合性がなければなりません。
合わせて企業のやるべきことと人事施策のつながりも必要で、施策に一貫性のあることも重要です。効率も軽視してはならず、業務において人が行うべき部分に集中すべきで自動化できるものは機械化で実現してしまいましょう。

4.リモートワークのマネジメントで工夫することの具体例

1)意思決定に関する定量データ(ファクト)を見ながら業務遂行する
2)出社メンバーのログを残して安全性を担保する
3)価値提供と行動が適切に結びつくよう仕組みを作る
4)行動指針に沿った行動を皆がしている状態を作る
5)1on1で心身のコンディションをマネージャーが管理する
6)エンゲージメントサーベイで心身のコンディションを盛り込み(ゲッポウのような仕組み)チームの中でOKR(誰でも見れる状態)を設け共有する
参考:https://www.geppo.jp
7)Zoomで朝誰かにスピーチしてもらう機会を設けつながっている安心感を醸成する

5.リモートワークにおいて新たに作った制度

1)画面上に家族(子供)が出てくることをOKにする
どうしても子供の面倒を見なければいけないケースがリモートワークでは発生します。
2)今後どうしても家で業務ができない場合を想定してリモートワーク部屋を近隣で借りる
リモートワークにより交通費が削減されるので、そのコストをどう有効活用するか検討せねばなりません。
3)フレックス制度の導入
保育園の登園自粛により通常業務時間中に子供の面倒を見ることが厳しい社員もおり、コアタイムにガッチリ勤務時間を当てはめると無理が生じるケースもあります。オールフレックスを実験的に実施することで、朝と夕方だけ働く、週休3日にするなど、1週間40時間担保に柔軟に対応している企業もあります(これまでの経済の仕組みは「育児を犠牲にしていた」のかもしれません)。
4)時間有給休暇制度の導入により、フレックス機能拡張も有効
5)知恵袋制度。社員同士でリモート環境下相談できるツールによる安心感の醸成も可能

6.労働の市場原理の変化に対応する
仕事が楽しさを与えてくれるケースはこれまでにもあります。楽しい仕事でお金がもらえるという一見不思議な状態です。「楽しい=通常は娯楽などによる消費活動の結果得られるもの」という認識が大半でしょう。RPAに代表されるツールが浸透することにより、人が行う仕事が手作業による処理から何かを生み出すことに変わっていきますと、魅力的な仕事が可能な企業とそうでない先の「人気」に大幅な差がつきます。楽しい、魅力的な仕事を提供できない企業は、人を集められず淘汰される可能性があります。

次回③ではリモートワーク環境のもとで求められるスキル、あるべき評価、オフィスの要否、社員への手当について生産性向上との関連を述べて参ります。

参考記事
リモートワークと労働生産性を考える①

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執筆者

上川 宙士

CANTERA6期生。
オートリース⇨人材紹介⇨イベント運営⇨人事周りへの商材を経験。
ある方に「人事の仕組みを知らずに働くのは、ルールを知らずにスポーツをするに等しい」という話を聞きCANTERAに参加。
CANTERANOTEの裏方として少しお手伝い。

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前回の記事(リモートワークと労働生産性を考える①)では企業文化と企業風土、企業の透明性、コミュニケーションについて生産性向上との関連を述べて参りました。本稿ではリモートワーク環境のもとでの動機付け、ストレスへの対処、マネジメントについて生産性向上との関連を述べて参ります。

リモートワークと労働生産性を考える①

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