CHROはキャリアから機能へ

最終更新日:2020/07/11

Writing by:長谷川貴久

当サイトをご覧の方の多くは「ヒトの側面から企業・事業をドライブできる(戦略人事を実践できる)人材=CHRO」を目指す人事担当者ではないかと思いますし、また、そうした方の中には、CHROとしての実力を身に着けるために研鑽を積まれている方が多数いらっしゃるはずです。

キャリアとしてCHROを考える

CHROという言葉が定着しはや数年、その間、CHROの育成方法についても様々な意見がありました(かく言う当サイトの母体も“CHRO養成講座CANTERA ACADEMY”です)。特に強いメッセージとして「CHROになるためには〇〇の経験が必要!」といったものありましたが、様々な意見がある中で人事担当者としてどのようなキャリアを描くのが良いか混乱されている方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は人事担当者自身のキャリアについて、いち当事者として考えていることを伝えさせていただこうと思います。

CHRO/戦略人事とは

従来の人事/人事担当者と戦略人事/CHROの違いなんでしょうか?
「戦略人事」とは、1990年代に米国ミシガン大学のデビッド・ウルリッチ教授が提唱されたもので、従来の人事との違いは以下と理解されています。

従来の人事:管理業務が主
戦略人事:経営者のパートナー。ヒトの側面で責任を持ち、企業目標達成のために積極的に経営に参加する。
 
当然のことでは?と感じる方もいるかもしれませんが、これは、従来の人事が労務対応や給与支払いなど管理業務が中心で、経営や事業推進のために積極的に関与する人事が多くなかったことから、「戦略人事」の概念が産まれたのではないかと思います。
そして、企業のなかで「戦略人事」を推進する人材こそ「CHRO(Chief Human Resource Officer)」です。Chiefですので、その担当領域だけの責任を負うのではなく企業の経営責任も負う、という点が従来の人事部との大きな違いとしてとらえられています。
つまり、企業や事業成長のために経営者と同じ視座にたって、ヒトの側面から成長を加速させることがCHROに課せられた使命ということになります。

なぜCHROが求められているか

ではなぜ、いま戦略人事/CHROが注目されているのでしょうか。その理由は「これまでに比べ、人材活用が企業経営に与える影響が大きくなったから」ではないでしょうか。これには、大きく2つの要因があります。

1つ目の要因は、日本の労働人口が中長期的に減少することです。日本は少子高齢化が進み、今後の労働人口は中長期的に減少していく見込みですが、今なお多くの企業で「新卒定期採用」「年功序列」「終身雇用」を下地とした人事制度の運用が行われています。今後、少子高齢化に伴い人材獲得の起点であれる「新卒定期採用」が難しくなるため、こうした環境で事業成長を維持するためにも、どのように採用し、配置し、育成し、処遇することが必要か、これまでの枠組みを超えたチャレンジが求められる環境に変化しています。こうした環境ではこれまでの管理中心の人事制度では不十分で、先を見据え、そして多様性を活用できる人事施策が経営戦略レベルで求められるケースが増えていることから、戦略人事/CHROに注目が集まっています。
 
2つ目の要因は、IT化が進み、これまで以上にヒトがイノベーションの源泉になっていることです。産業革命後、企業競争力は「いかに生産効率の高い設備を導入するか」にかかっており、ヒトの果たす領域はさほど大きくはありませんでした。しかし、昨今のIT化が進み、IT技術を活用した新たなサービスが生み出され、また企業活動をドライブしていますが、こうしたIT技術を企業や社会に実装できるのはヒトであることから、人材の活用が企業経営にとって重要な項目となっているのです。

CHRO育成に関する議論

このように戦略人事を実行できるCHROに対する社会ニーズが高まっていますが、どうすればCHROになる(成長できる)のか、今のこの点には明確な解はありません。
よく目にするのが、従来の人事部に必要とされたスキルに比べ、

・経営者としてのスキルや視座(CHROになるのは元経営者だ!論)
・マーケティングスキルや営業経験(採用領域に加え、従来の人事部が苦手とする定量的な業務管理・分析にマーケ経験が活きる)
・広報、プロモーションスキル(採用広報に活きる)
・コーチング力(経営者、従業員との対話)

といった知識が求められるという意見を目にします。
が、これら全てを備える超スタープレーヤーはほとんどいないわけで、また育成にも時間的・機会的な限界があるなか、「CHROになるのは難しいのでは?」となるわけです。

CHROは能力から機能へ

ではCHROのような成果を発揮できる人材となるためにどうするか。私が今意識しているのは、「CHROを機能として表現する」人材を目指すことです。
先の議論の通り、一人のスキル・経験・時間でCHROとして必要な全ての要件を満たすことは非常に難しいことです。ですので、求められる機能を複数の人やサービスと一体となって提供することで、CHROを機能として世に提供できる人材になればよいのではないかと考えています。
手法としては社内人材との連携や、外部人材・スキルシェアの活用などが効果的でしょう。また、CHRO機能提供人材になるために経営・マネジメント知識、事業に関する深い理解もさることながら、人事としての能力を高めたり外部人材のタレントプールを広げるためにもHRコミュニティの場を通じたスキルアップに取り組んでいるところです。

キャリアの可能性を信じて

さて、人事とCHROのキャリアについて書いてきましたが、これからどのようなキャリアを歩んでいくかは誰もわかりません。
これまでの人生を振り返ると中学高校と野球・ソフトボール、大学ではフリースタイルスキーに明け暮れキャリアに対する意識が全くなかった自分が、今、CHROという目標を持って活動ができているのは、これまでの経験・出会いとその影響を受けたことによるアクションの積み重ねだと感じています。
 
キャリア論ではスタンフォード大学のジョン・クロンボルツ教授が提唱した「プランドハプンスタンスセオリー(計画的偶発性理論)」という考え方があります。これは「個人のキャリアの大半は偶然の出来事の積み重ねにより形成されるため計画的に進まないが、積極的にアクションを行うことで良い偶然を引き寄せることができる」という考え方で、目の前の課題を解決するためポジティブにアクションを続ければ現在の自身が想像もしないようなキャリアに広がる可能性がある、といことを示唆したものです。
 
今、人事という領域にいる私も3年後5年後は別の領域に関心が移っているかもしれません。が、それも良し。そうした可能性を広げることこそ、キャリアの面白さなのだと感じています。
こうした可能性や選択肢を増やすためにも、良き偶然との出会い大切になりますが、そのための場として職場外のコミュニティが今後さらに重要になるでしょう。
CANTERA ACADEMYそしてCANTERA NOTEはそうした職場外の刺激を受けるコミュニティでありがたいと思っておりますし、これからも努力してきます。
このメディアが皆様のキャリアにとって一助になれば幸いです。

なお、当コラムの内容は個人の意見です。

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執筆者

長谷川貴久

CANTERA1期卒業生。
CANTERA卒業生の有志勉強会である「CANTERA放課後倶楽部」の企画・運営に携わる。
新卒で製造業に入社。営業、人事等を歴任。人事歴は10年超で、人事・給与設計から採用、労務等の人事業務全域を幅広く経験しています。
入社後のビジネススクールに通うなど個人のキャリア育成に関心があり。また、育児休暇を取得するなど、2児の父として家庭とキャリアの両立の”実践”にもチャレンジしています。

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