エンプロイーサクセスの2つのゴールとは

最終更新日:2020/09/09

Writing by:平山鋼之介

こんにちは。CANTERA ACADEMY4期生の平山です。
前回に引き続きエンプロイーサクセスについて考えてみました。
今回のテーマは『エンプロイーサクセスの2つのゴール』です。

そもそもエンプロイーサクセスにゴールってあるの?

そもそもエンプロイーサクセスにゴールはあるのか?というテーマを考えたとき、『サクセス』という言葉の定義は人それぞれであり、絶対的なものではないことを踏まえると、明確なゴールはないと言えるでしょう。

そして、人の欲求というものはアップデートされ続ける性質ということを踏まえると、究極的なゴールは永遠にないとも思われます。
といったことを言い始めたらキリがないため、『こうなったらhappyだよね?』という状態をエンプロイーサクセスのゴールと定義して、2種類のゴールを考えてみました。

<ゴールA> happyな卒業!

前回の記事で紹介したエンプロイーサクセスのアプローチはこの考え方をベースとしています。いわゆる退職マネジメントのスタンスです。

退職マネジメントは、組織開発の観点で最近テーマになることが多く、私自身も参考にしている考え方です。簡単に解説すると、「離職率を下げよう」という長期雇用前提の人材確保のアプローチではなく、「どのような退職が理想的なのか」という人材の流動化を前提とした組織のあり方を考えるアプローチです。

(従業員視点でのゴール)
『良い経験ができた。成長する機会をたくさんもらえた!ここで得た経験を活かしてステップアップ/キャリアチェンジします!』
という前向きでhappyな卒業ができる状態。
キャリア視点でいうと、個としての成長・成功・影響力拡大のような志向性にフィットする価値観です。

(会社視点でのゴール)
『辞めてしまうのは惜しいが、これまで十分に貢献してくれたし、周りにも良い影響をたくさん与えてくれた。次のチャレンジを応援するし、今後も機会があれば一緒に仕事をしたい』
という卒業後もアルムナイとしてつながり続けられる状態。
このゴールパターンは一般的には外部環境変化のスピードが速く、人と組織の新陳代謝が事業成長につながる業態にフィットすると考えられてきました。
人材業界、IT業界の企業はこのパターンが非常に多いと思います。

<ゴールB> この仕事をしている瞬間がhappy!

『好きを仕事にする!』もしくは『この仕事が好き!』というアプローチ。
(こんなキャッチコピーの転職情報誌ありましたね)
『やりがい重視!自分に向いている仕事に出会いたい』という仕事そのものにエンゲージされるスタンス。

(従業員視点のゴール)
『お客様からの感謝の声が私の生きがい!』『この仕事で世の中を良くしたい!』という他者貢献によるhappyを感じられる状態。
報酬アップやキャリアアップよりも、今のhappyがより深く、長く続くことを求める状態。
いい会社、自分に合う会社で長く働き続けることが理想。
個人のキャリア視点でいうと、技術や能力を磨いて高い品質のアウトプットを出す、いわゆる職人的な志向性にフィットする価値観です。

(会社視点のゴール)
『お客様への貢献こそが我々の存在価値。この価値観をわかちあいながら、社員と一緒に成長し続けたい。』という三方よしの精神で永続的な発展を目指している状態。
このゴールパターンは伝統的な日本企業の多くが目指してきた、社会の公器としての組織の成功モデルと言えます。
社員を長期雇用し、仕事をしながら育成していくという家族的価値観を持っている企業が多いのも特徴です。
サービス業、接客業、ものづくり、医療、介護、教育などの業界の企業がこのパターンが多いと思います。

A or B ? A & B ?

皆さんはAとB、どちらのサクセスがお好みでしょうか?

皆さんの会社はAとB、どちらのサクセスを目指していますでしょうか?

Aを好む人がBを目指す会社に入った場合、価値観の相違、いわゆる『カルチャーアンマッチ』という状態に陥ることが容易に想像できます。
世の中のカップルの離婚原因もこれが最も多い理由と言われますね。
※Bを好む人がAを目指す会社も当然ながら同じパターンです。

では、AとBのどちらが正解なのでしょうか?

皆さんもお気づきの通り、AもBもどちらも正解なのです。

それと同時に、AとBのどちらも間違いとも言えるかもしれません。

Aのスタンスで成長のみを追い求めた場合、いったいいつになったら幸せを感じられるのでしょう?
・年収が1,000万を超えた時?
・有名になってメディアに取り上げられた時?
・会社が上場した時?
・就職先人気ランキングに入った時?

急成長したスタートアップが、成長の踊り場に立った時に改めてMission/Vision/Valueを見つめなおすというのは、AからスタートしてBを統合していくというパターンの典型例だと思います。

Bのスタンスでのんびりと幸せを感じていたら、AI/ロボットなどのテクノロジーや、海外資本の質が高くコストが安い新興サービスによって市場が奪われ、経営が立ち行かなくなってしまった場合、再びhappyな状態を取り戻せるのでしょうか?

・給与を下げてでも、やりがいにのみ生きる?
・今までと違う職種でイチからやり直す?
・三方よしのポリシーを捨てて、利益偏重にスタンスを変えて生き残る?
・ポリシーを貫いて、赤字、廃業を受け入れる?

構造的な不況に陥った伝統的な企業が、テクノロジーを取り入れることで本質的な価値を損なうことなく生まれ変わっていく成功モデルも数多く出始めています。

これはBのスタンスを大事にしながらAを統合していくというモデルではないでしょうか。

ということで、エンプロイーサクセスのゴールに関する本日のまとめです。

(1)A & Bをゴールとして思い描くこと。
(2)そしてその山に登るルートは、Aから登りはじめても、Bから登り始めても良い。
(3)登り始めるルートは自分の好みに合った方から登ること。この時に嘘をつかない、誤魔化さないことが大事。
(4)登っている道中に反対側のルートがあることを認め、受け入れること。
(5)ある程度まで登れたら、反対側のルートにチャレンジする勇気を持つこと。そのための準備をしておくこと。

ちなみに私は数年おきにAとBを行ったり来たりしてきた気がします。
20代中盤から後半まではAを目指し、結婚して子供が生まれ、人事という立場でキャリアを積む中で30代はBの方に振り子が振れ、40歳前後で人生100年時代のキャリアを考えたときに再びAの方に振り子が振れてきました。
狙ってやってきたわけでなく、周囲の環境や様々な情報のインプットから影響を受けながら、自分の価値観と向き合ってきたら結果的に、そうなっていたという感じでしょうか。

最近になってやっと、A&Bがぼんやりと見えてきたかなーという状態です。

皆様のキャリア&組織づくりの参考になれば幸いです。

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執筆者

平山鋼之介

CANTERA4期卒業。
学生時代にインターネット関連の事業起ち上げを経験の後、商社系携帯電話販売代理店にて大手家電量販店の営業を担当。
その後、人事部に異動し採用/人材開発/人事評価・昇格制度を担当。社内カレッジ設立/女性活躍推進/M&Aに伴う人事評価制度改定/企業理念の改定・浸透などの全社プロジェクトを推進。9年間で2,000名以上の採用と6,000名以上の研修を担当。
2019年より東証1部上場インターネット関連企業にてグループ全体のHR関連業務を担当。 事業成長と社員のキャリア自律の同時実現をテーマに日々奮闘中。

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