イノベーション人材を生み出す組織づくりに向けて

最終更新日:2020/09/11

Writing by:星野雄一

スタートアップであれ大企業であれ、事業が成長・成熟しても守りに入らず、サステナブルな成長を遂げたいという思いをお持ちだと思います。そして、その実現のために「次のイノベーションを生み出したい、生み出せる人材を育てたい」という想いを持ち、人材育成や組織づくりを行うために試行錯誤されていることでしょう。

イノベーションのDNA

ではそのような中、イノベーションを生み出す人材はどのように育てれば良いのでしょうか。いや、そもそもイノベーターとはどのような能力を持っていれば良いのでしょうか。ここではそれを考えるための糸口として、「イノベーションのDNA」というイノベーター研究の結果を紹介したいと思います。

イノベーションのDNAとは、イノベーターの能力とは何かについて、「イノベーションのジレンマ」や「ジョブ理論」で有名なハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセンはじめ、ジェフリー・ダイアー、ハル・グレガーセンの3名が、アマゾンのベゾス、セールスフォースのベニオフ、P&Gのラフリーらを始めとした世界のトップイノベーターを8年間に渡り研究したものです。

この研究では既存事業で重んじられる「実行力」よりも「発見力」でイノベータとそれ以外の人たちで大きな違いが表れたと伝えています。

発見力を支える5つの力

さらにこの研究では発見力をさらに次の5つの力に分解しています。

・質問力(Questioning)

・観察力(Observing)

・ネットワーク力(Networking)

・実験力(Experimenting)

・関連付け思考(Associating)

これらは最初の4つの行動スキルと、そこで得た様々なインプットを高度に紐づける5つ目のスキルで構成されています。またDNAと言いながらも、潜在的な能力ではなく、これらの行動を積み重ねることで後天的に能力として高められるそうです。

イノベーターを育む業務環境づくりに向けて

後天的であるということは、これらの力は企業の業務環境によって育まれたり、封印されたりすると言えるわけです。

例えば質問力で考えてみましょう。強い商品を持っていて、顧客がその商品を買うか買わないかを素早く判断するための営業が優れている企業の場合、この企業の営業メンバーは馴染みの顧客・業界に対する知見をベースに顧客の状況を踏まえながら購入確度を測るための質問力は育まれているかもしれません。
一方で、新規事業で求められるような、まだまだ商品も確立されていない、目の前の人が顧客かどうかもわからない中で、顧客の置かれている状況や真にやりたいことを見出すための質問力は発達していない可能性があります。

ネットワーク力はどうでしょう。イノベーションのDNAで言われているネットワークとは、既存事業の成長・拡大フェーズで有効な人脈を広げるようなネットワークを指しているのではなく、自分とは異質な人や集団と交わり、新たな発見を得るネットワークを指しています。
ですので、業界内の団体に頻繁に参加して人脈を広げると言う行動とは異なりますし、ベンチャー企業の社員が、ベンチャー企業同士が集まる場に参加し、様々な企業と繋がったり情報を得るという行動ではスキルとしては物足りないと言えます。
必要なことは、異なる業種業態、企業規模に属している人、またビジネスをやっていない人など普段合わないような人たちが集まる場に行き、自らとは異質な人と出会い、対話しながら自分が今まで考えたことや遭遇したことのないような視点を発見するようなイメージです。このような行動を育まれる業務環境はなかなか無いかと思います。

社員がこのような行動を取れるようにするために、会社が人事ができることは?という問いを立ててみると良いのではないでしょうか。

最初はイノベーティブだった事業もそのステージが発展していく中で、その事業の業務遂行力(実行力)は高まりますし、また組織も細分化され、仕事も上手になり、業務効率も上がってきます。
それと共に各従業員の認知の外側にあるような想定外の発見を得ることは減ってきます。また現場のマネジメントは業績目標達成に向けて、最適な業務配分をしたがるものです。
だからこそ、人事が経営とタッグを組んで発見力を育めるような環境をデザインすることは極めて重要なことになります。本人の志向や特性はもちろん、組織構成や評価基準、発見力を育むためのプロジェクト企画など、企業および事業の成長ステージを見極めながら考えることが、既存事業を発展させつつイノベーション文化を育むための足掛かりになります。
もちろん組織風土づくりは一朝一夕で成し遂げられるようなものではないですので、あの手この手で仮説検証しながら進めていくことをお勧めしますし、実感覚としてもそのようなマインドセットの会社はうまくいっているなと感じます。

ちなみに余談ですが、イノベーターのDNAは毎年米国で行われている人材カンファレンスであるATD-ICEの発表でも引用されていました。ただイノベーターや起業家マインドに関するセッションは日本人の参加がまだまだ少ないです。まさにビジネスと人材の狭間にあるテーマであると思いますので、CHRO/HRBPを意識されている方は着目しては如何でしょうか。

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執筆者

星野雄一

大手住宅関連メーカーで工場企画、品質管理業務をリーダーとして取り組んだ後、IT業界を経て、コンサル会社にて製造業の研究開発部門に対する人材開発・組織開発コンサルティングを数多く展開。また事業責任者として多くのマネジメントを輩出。
その後、ITスタートアップのグループ経営幹部・子会社代表としてIPOに向けた事業基盤・組織づくりを推進、この頃CANTERAと出会う。
現在は、事業部と人事、経営と現場の橋渡しをしながら組織成長とビジネス成長の両輪を加速させるコンサルティングを行なっている。

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