生産性が高い職場をつくるための「エンゲージメント・マネジメント」

最終更新日:2020/09/15

Writing by:酒匂光晴

先日の記事「これからの中小企業に必要な3つの組織マネジメント手法」にて紹介した2つ目のマネジメント手法が「エンゲージメント・マネジメント」です。
エンゲージメント自体は一昔前から認知されている言葉ではありますが、念のため確認すると意味としては「従業員の会社に対する愛着心」となります。
しかし、「エンゲージメント」については誤解が多く、よくある間違った認識としては「従業員満足度」と混同されがちです。従業員満足度とエンゲージメントはイコールではないのです。

エンゲージメントとは何か

ではそれぞれ何が異なるのかというと、「従業員満足度」は言葉の通り従業員が会社に対してどのぐらい満足しているかという顧客満足度のような指標ですが、「エンゲージメント」とは「従業員が会社に愛着を持ち、目標達成に向けての行動を自律的に行う状態」です。
もっと言えば「会社と個人が対応な関係であり、互いに成長・貢献し合える関係として必要とし合っている状態」と言えます。そのため、従業員満足度が高くても会社の生産性や定着率とは連動しないことがあるのに対して、エンゲージメントが高い会社は生産性や定着率が高くなる傾向が強いというのが大きな違いです。

エンゲージメントを向上させるための4STEP

では、このエンゲージメントを高めるためにはどんなポイントを押さえればよいのでしょうか。エンゲージメントについては様々な機関によってそのポイントが提唱されていますが、私はまずはシンプルに以下の4STEPでサイクル化することを推奨しています。

●STEP1 所属感

私が新卒で入社したリクルートでは、新卒・中途や雇用形態問わず、毎月の壁新聞(社内の至る所に貼られている大きなポスター)に入社者全員が顔写真と一言コメント付きで紹介されるということが行われていました。これにより、毎月同僚同士で「今月はこんな人が入ったんだ~」という会話がなされ、部署が異なっても自分が興味関心を持った人は覚えているということが起きていました。

またデスクの上(正確には天井)には【入社おめでとう!○○(氏名)さん!】【(異動の場合)歓迎!○○さん!】と、遠くから見ても「一目で誰が入社してきたばかりなのかわかる」仕組みがありました。デスクに大きな字で氏名が書かれていて、「初めて会う人」でも「名前を呼んで声掛けができる」仕組みが整っていました。

こうした仕掛けによって新人は「自分が歓迎されている」「知らない人からも名前で呼ばれたり、自分を認知してもらえている」と所属感を増すことになります。ちなみに新人だけでなく、ベテランも同じような仕組みがあり常に認知される状況が出来上がっています。

重要なのは人に頼るのではなく、仕組みでカバーするということです。人は挨拶を強要してもしません。ですが話しかけたいときに名前がわかる、新人がいるなら声をかけようと思う、この心理に合わせた仕組みを作ることが重要なのです。

●STEP2 所有感

「自分が誰の何の役に立っているのか」「誰にたいして影響を与えているのか」これを認識させることが重要です。自分の仕事が会社を代表する仕事になっていること、顧客や同僚に影響を与える仕事であるということ、もっと言えば自分の行動が世間的には会社の行動である、ということを意識させ、自分と会社が一体であるという感覚を持ってもらうことがこの「所有感」を生み出すうえで重要なことと言えます。

例えば、飲食店で働くアルバイトであれば、単なるアルバイトで自分と会社が別物だと認識していればバイトテロにつながるようなことをやってしまうでしょうし、自分が会社を代表していて、さらに人の役に立っている存在だと認識していれば、とにかく良い行動をとるようになります。一般企業においても自社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)だけでなく、いかに自分が「誰の何の役に立っているのか」を常に語りながら体感させることが重要となります。

何よりも重要なことは、日々、先輩や上司が「仕事の意義や価値」について語っていること。または意識が「顧客」に向かっていて、「顧客」のための発言・行動をし続けていることです。ドラッカーが言うことろの「どこに目を向けさせるか」でパフォーマンスが変わるという典型であるともいえます。

●STEP3 貢献感

「所属感」と「所有感」を持っている従業員は、組織に対する愛着が溢れ、組織構成員や顧客に対して「貢献」したいと考えます。自分自身が満足する環境を提供してくれた組織や仲間・顧客に対して恩を返したくなるのです。新人・ベテラン問わず、人は誰かの役に立つと嬉しいもの。だからこそ、行動に対しての感謝を伝えることが当たり前の組織にすることがこの「貢献感」を育てるための第一歩です。

幸福学の研究では、日常の感謝を定期的に設ける人と、そうでない人では幸福度に圧倒的な差があるという報告がされています。これを組織に当てはめると、日常の業務に対する感謝があるチームとそうでないチームでは、仕事をする上での幸福度が圧倒的に変わるということです。

ここで重要なことは何かというと、決して幸福度は「ありがとう」を言われた数ではないということです。もちろん「ありがとう」を言われることは大事なのですが着目すべきは「ありがとう」を言った人の方が幸福度が高まるといった研究報告です。実は、日々の感謝を受け取るよりも、日々の感謝を思い浮かべ与える人の方が幸福度が高い。与える人が最も幸せで、受け取る人も幸せになるのであれば、非常に素敵なことですね。

●STEP4 成長感

いよいよ最後のSTEPですが、エンゲージメントを向上させるうえで外せないのがこの「成長感」です。すでに皆様はお分かりの通り、エンゲージメントを向上させるには上記の3つが外せないのですが、この「成長感」が抜けてしまうと生産性向上につながりません。やはり自身が誰の何の「役」に立つのかが明確にわかるのがこの成長感でしょう。

成長感は、成果やプロセスに対する周囲のFB(フィードバック)によって成り立ちます。自身の行動が「誰にどんな」影響を与えているかを知るには他者からのFBが最も役に立つからです。

FBのポイントとして重要なのは「昨日の自分よりも成長したポイントは何か」です。ありがちなのは社内のできる先輩との比較でFBをしたり。現状と理想のGAPでFBをすることです。それはもちろん成長にはつながるのですが、成長「感」にはつながりません。

重要なことは「感」を出すことなのです。

エンゲージメント向上のために

さて、ここまで4つのSTEPについて解説してきましたが、上記のサイクルを回す職場づくりをすることで、個人と組織がともに与えあい、貢献し合い、成長し合うという、自律的な相互依存関係が生まれます。

重要なことは与えるのではなく、環境を整えてそれぞれが自律的に発展する仕組みを作ることです。今回の記事が、エンゲージメント向上のための一歩を踏み出せずに困っている人事パーソンの何かのお役に立てれば幸いです。

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執筆者

酒匂光晴

CANTERA9期生。
リクルートグループの人材領域事業にて営業、営業企画、商品企画、代理店統括などに携わり、営業マネジメント、事業マネジメントを経験。その後、フリーランスとして活動しながら、数社のスタートアップの立ち上げ、営業責任者、役員を歴任。
2019年3月にカエテク株式会社を創業、代表取締役に就任。「幸せを実感できる社会を創る」をミッションに、企業の存在意義をクライアントとともに捉え直し、理念経営を起点とした人材採用、組織づくり、人材育成を展開。コンサルタント、講師、ファシリテーター、講演家。おもてなしNPO運営。旅行・食べ歩き・飲み会・楽しいことが好き。基本的にアホで自由人。

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