【CANTERA talk】コーチングプロフェッショナル森真貴子氏とCANTERA ACADEMY卒業生が語るコーチングの本当の魅力とは(前半)

最終更新日:2020/09/24

Writing by:上川 宙士

CANTERA ACADEMYメンバーが人事領域のプロと語るCANTERA talkの第三弾(前半)。
今回はコーチング界のプロフェッショナル森真貴子様と、CANTERA ACADEMY3期卒業の能登隆太さんのお二人にご自身の(苦い?)経験も含めてコーチングの本当の魅力について語っていただきました。

森 真貴子 様

一般社団法人トラストコーチング
プロフェッショナルコーチ

大学卒業後、東証一部上場のコンサルティング会社に入社。
中堅中小企業から上場企業まで、様々な企業の経営支援に携わり、教育事業会社や介護事業会社の役員などを歴任し、独立。
独立後、自らが代表を務める会社で部下のマネジメントに悩み、トラストコーチングスクールで本格的にコーチングを学び、最上位資格である「TCS認定プロフェッショナルコーチ」の資格を取得。
現在は、大手企業や省庁で管理職向けのコーチング研修や、あらゆる職種・階層向けのコミュニケーション研修等を担当しながら、経営者やビジネスマンを対象としたパーソナルコーチングを提供している。

能登 隆太 さん

CANTERA3期卒業生。 

新卒で伊藤忠商事株式会社へ入社。入社後は人事・総務部配属となり新卒採用を担当し、採用ブランディングや採用戦略設計、面接官研修等に従事。その後、中国での語学研修を経て帰国後、海外人事(海外出向対応、駐在員処遇、現地生活調査等)に従事。
2018/7にHRTech、データ活用を通じた人事業務の高度化を目的とする「次世代HRタスクフォース」を立ち上げ、併せて全社の研修企画も兼務。
2019/7より、市場や消費者ニーズに対応した「マーケットインの発想」による新たなビジネス創出を担うべく全社で新設された「第8カンパニー」の人事担当に従事。トラストコーチングの認定コーチとしての顔も持つ。

Q:まずはじめにコーチングを学んで良かったこととは何でしょうか?

能登:コーチングを学んで良かったことは、自分に対して根拠のない自信が湧いてきたことですね(一同笑)。

まじめな話としては、自分との対話の質が変わったことが一番です。その結果として自分自身の強みも弱みも正面から受け止めることができるようになりました。

実は私はコーチングを学ぶ前の社会人3年目まで、力でメンバーを抑えつけるオラオラタイプの人間でした。当時は自分が抱える不安や自信の無さを他人に見せること=人としての弱さだと思っていたので、そういう態度をとっていました。

一同:へぇ〜。今の能登さんのイメージと全く違う。

Q:能登さんをそこまで変える影響力を持つコーチングとはそもそも何なのでしょうか?

森:対話を通じて相手の目標達成や自己実現をサポートするコミュニケーションの技術と考えています。

サポートする上で重要な要素はより早く、より確実に、「より楽しく」ですね。

その中で特に肝心なのは「より楽しく」。成長のプロセスを本人が楽しみ、目標に向かっている感覚を持ちつづけ、新たな行動につながることが肝心です。

そしてコミュニケーションの質が上がることで、周りの人とより良い信頼関係を築くことができるようになれるという点もコーチングを学ぶ魅力でもあります。

Q:昨今、コーチングが注目されていますが何故でしょうか?

森:組織のあり方が変わってきていることが背景にあるのだと思います。

個々人の価値観、キャリア、意識そのものが異なることが、昔と比べて組織の中でオープンな世の中になりつつあります。

どうすれば価値観が異なる社員や上司・部下が信頼関係を築くことができるのか、多くの組織がこのような難しい課題を抱えています。その問いを解決していく一助としてコーチングを導入する企業が増えたのではと考えています。

これまでは特定の専門知識や企業内の情報だけで社員の教育は可能でしたが、今はそれだけでは十分とは言えません。教育をする中で企業や組織のルールを押し付けるような手段を取ると、場合によってはパワハラと言われるリスクもありますよね。

また、企業としてどのように社員一人ひとりにリーダーシップを発揮してもらうか、という問いも発生していて、その解決に貢献する手法もまたコーチングではないかと考えています。

Q:コーチはコンサルタントやカウンセラーとどう違うのでしょうか、なぜ引き合いが増えたのでしょうか?

森:私はコンサルタント出身です。コンサルタントの課題解決手法での限界を企業や組織の現場が感じているからではないでしょうか。

コンサルタントは理想や目標を顧客に提示できます。ただし、その理想の実現や目標に向けた行動を促すには組織内の人間関係や個々のモチベーションが理想的な状態になっていなければなりません。目標達成をするには課題解決のための手法だけでは難しいのではないでしょうか。

カウンセラーは主に相手が現在抱えている問題を解決することをサポートします。よって過去にどんなことがあったのか様々な視点で相手の話を聞きながら原因を探っていくケースが多いです。一方のコーチングは現在から未来に視点を向け、相手の行動が変わることを目的として対話を繰り返します。相手が目指すゴールを達成するためにどんな行動や意識づけが必要なのかを一緒に考えていくイメージですね。

良い悪いではなく、相手が目標を達成すべく自律的に一歩踏み出すサポートをするコーチングを通じた支援が、多くの企業に興味を持って頂けている背景ではないでしょうか。

Q:なるほど。一方でまだ日本ではこれまでお伺いした本質的なコーチングの魅力が伝わりきっていないように感じるのですが、その理由は何でしょうか?

森:「コーチング=スキル」という誤解が世間に浸透してしまっているのかもしれません。

今はまだ質問や傾聴という、一部のコーチングスキルにのみ注目が集まっています。

スキルを学ぶことはコーチングの一部に過ぎず、スキルを活かして他人や自分との関わり方をどのように良質なものにしていくかがコーチングの本質だと思います。

人と深い信頼関係を築くために、まずは自分自身との向き合い方が改善されるという点がコーチングの優れたところでしょう。

Q:何がきっかけで自分との関わり方や心のあり方が大切と気づいたのですか?

森:コーチングを学び始めたきっかけは、自分がリーダーとして自信がないという状態を変えたい、自分の組織のメンバーをなんとかしたいという想いです。

コーチングを学ぶ以前、リーダーとしての自分に劣等感をもっていて、そんな自分が誰かを変えようなんて無理だな、と気がついたのです。

コーチングの学びをまず実践に移した対象は自分自身でした。つまり自分との対話、1on1。それが全ての出発点ですね。

私たち誰もが持っている「曇ったメガネ」と言えるかもしれない世の中や他人に対する「思い込み」や「決めつけ」といった認識を見つめ直すことで、自分に対しても周りに対しても徐々に見方が変わっていくのを感じました。

Q:コーチングを社内に浸透させたことで起こったことは何でしょうか?

能登:私の勤務先ではマネージャー向けのリーダーシップ強化トレーニングがあるのですが、開始3ヶ月後に参加者に大きな変化がありました。このトレーニングでは、マネージャーは毎日部下からその日の関わり方に対するサーベイに回答されるのですが、3ヶ月後くらいからスコアが上向いてきました。

参加者に背景を聞くと、それまでマネージャーである自分が担当組織のあらゆる役割や業務を全部マスターしていないといけないという無意識の不安や恐れを持っていたことに気がついたと言うのです(当然細かなことまで全て一人ではできません)。

コーチングを通じて、メンバーに助けてもらう=上司として失格という捉え方ではなくメンバーの力も借りながら組織パフォーマンスを高める=理想的な上司であると気づいてから自然とメンバーの自分に対するサーベイスコアが変わったと言っていました!

森:3ヶ月で気づけたのはすごいですね!

Q:アメリカではフォーチュン500の企業の内、約48%の経営者がコーチをつけていると言われていますが、日本ではそこまでコーチをつけることが浸透していないように思います。コーチをつける意味とは何でしょうか?

森:今の成熟社会では新しい価値提供や変革がビジネスで大きなインパクトを生み出すため、誰もがその成果を求めています。

新しい価値を提供したり変革を起こすには一人ではなく、誰かとの関わり合いが必須です。その意味でコーチはサポーターとして適任でしょう。

なぜなら誰かとの対話をしないと、良い気づきを得にくいのが実情だからです。ある程度は自分との対話で気づけますが、安心して話せる壁打ち相手がいてこそ深い気づきを得られると思います。人は話しながら考えると言いますよね。

Q:テクノロジーの発展で人事のできることが少なくなるのではないでしょうか?

能登:むしろ逆だと思います。アンドロイド(ロボット)研究で有名な大阪大学の石黒教授が「自分は自分のことを他人ほど知らない」とおっしゃっていました。ロボット分野のトップランナーの方の言葉だからこそとてもインパクトがありました。これを聞いてまさにコーチングが大事だなと。
人間の本質を理解する為には対話が欠かせません。これからの時代はむしろ人間らしさとは何かを追求すること、そして自社や自らの存在価値をどこまで深掘りして言語化できるかがとても重要になると感じています。そうなった時、むしろ人事がコーチとしての役割も担うことができれば更に重要性は増すのではないでしょうか。

Q:コーチングがビジネスの場にもたらすメリットとは何でしょうか?

森:社員一人ひとりが創意工夫や自己成長を目指し、個々の力が増すというメリットですね。

例えば官僚的な組織文化があると思われる企業がコーチングを導入することで、社員が仕事にこれまで以上に創意工夫をしたい!という意欲が湧いたとしたら、大きなメリットですよね。

私のお客様で建設関連のインフラ企業がいらっしゃいます。

建設というと機能的な価値が企業の価値と思いがちですが、お客様曰く、

「私たちの仕事は、自己との対話と誰かとの対話の上でより良いものに創造され、安全が保たれている」。

エンジニア一人ひとりが自己や顧客、ステークホルダーとの対話を通じてよいインフラを作っている。コミュニケーションこそが大事なキーなのだとおっしゃっていました。

導入前はコーチングに対する誤解もおありだったので、私自身もお客様との対話を続けたことが良い結果につながったと思います。

一般的な組織においても、自律型の人材を育成する意味でコーチングはメリットがあります。多くの企業では上司がメンバーのモチベーションをあげるため、メンバーに発破をかけるようなことも多いのではないでしょうか。それも一定の効果はあるかもしれませんが、これからは自律型人材同士のコミュニケーションでよりインパクトのある価値が生まれると考えます。

能登:ワクワクしますね。自律型人材が多い組織、どんな組織になるんだろう笑!

Q:昨今改めて、どのような価値を社会に提供するかが企業の最優先事項であると言われていますが、その意欲が強い企業ほどコーチングを学ぶことに加速をかけているようです。どう思われますか?

森:本当に価値を生むことを中心に考えている企業が増えていますね。個人に目を向けると情報過多の中で、自分の哲学を持ちたいビジネスパーソンの方々が率先してコーチングを学ぶ傾向にあるように感じています。

能登:無意識に発する自分の言動や振る舞いが組織に大きな影響を与えていることがよくあります。私自身コーチングを学ぶことで自分を客観的に振り返れるようになり、結果的に自分の信念という行動の軸を定めることができました。

森:世の中に唯一の正解はありません。ただ、日々自らが選んだ選択によってその後のパフォーマンスが変わります。適切な選択をするためにコーチングは役に立ちます。

能登:一時期、コンサルタントの方が書いた書籍やフレームワークを学んで賢くなった気になっていた過去があります(苦笑)。一方、その時は自分の中のモヤモヤも増えたんです。

コーチングを学ぶことで気づいたことは、自分を安心させるために「知識」を求めていたということでした。「知識」は何かに使うために学ぶはず。「知識」をつけることが目的にすり変わっていました。その後、自分と徹底的に対話し「そもそも自分はどうありたいのか、何を人生で成し遂げたいのか」という問いに対する答えが明確になったことが何よりも大きな収穫だったかもしれません。

森:自分に軸があると得た知識の価値も高まりますよね!

次回後半は「コーチングを実践する上での障壁や森さんの苦労談」などをお伝えいたします。

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執筆者

上川 宙士

CANTERA6期生。
オートリース⇨人材紹介⇨イベント運営⇨人事周りへの商材を経験。
ある方に「人事の仕組みを知らずに働くのは、ルールを知らずにスポーツをするに等しい」という話を聞きCANTERAに参加。
CANTERANOTEの裏方として少しお手伝い。

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