トラブル対処にエニアグラム①人間関係トラブルに人事はどう対処するか【前編】

Writing by:澄川寛

企業で出世するのは、「他の人に比較して、高い成果を出したトッププレイヤー」です。

しかし、トッププレイヤーが、必ずしも「人を管理する能力」 「人を育成する能力」を持ち合わせているわけではありません。

マネジメントの能力やリーダーシップの能力は、個々人の資質・能力・研鑽に大きく依存することになります。

人の問題は、現場で解決しきれなくなってから、人事に相談が来る

会社としても、社内外でのマネジメント研修を行うなど様々な工夫をしますが、各部門では極論としてマネジメントよりも業務遂行が優先されがちです。そこでは人の問題は「業務」ではなく「状況」となってしまうため、目の前で解消すべき課題として取り組まれずに、ダラダラと「困った状況」程度の認識で放置されることが多いのではないでしょうか。

そのようにして「人を管理する」「人を育成する」といっ た部分をうまく運用できないまま時間が過ぎると、高い確 率で人間関係のトラブルが発生します。

こういった人間関係のトラブルは、人事に連絡が来た時に は、すでに感情的なこじれにより、指示命令系統が機能しない状態になっていることが少なくありません。

そして、「こじれた問題」ということは、社内のメンバー、社外のお客様、企業の将来への影響……と、悪影響が広がる範囲に際限がありません。人事にとっては、「待ったなし」の重要課題のため、早期に解決しなければなりません。

コミュニケーションギャップの積み重ねが、相手に対する色眼鏡を生む

仕事をするうえで、上司・部下・業務委託先・取引先など、様々な「他人」と協力することが必要になります。
しかし、往々にして自分の考えていることが、うまく相手 に伝わらないケースが発生してしまいます。 意思疎通がうまく出来ないと、相手に対して否定的になり、関係が悪化しがちです。

ここではサンプルとして、上司Aさんと部下Bさんが、コミュニケーションギャップによりうまく行かなくなった例を挙げます。

【上司Aさんの言い分】

仕事を指示すると、「あれもこれも確認してください、この件はどうしましょう?」と細かいことを延々と質問攻めしてくる部下B君。何から何まですべて指示を求められても困る。仕事をする以上、誰でも成果を出すために必死で考えて課題を乗り越えるのが当然だし、そうやって人は成長するのだ。少しは自分で考えてくれないと困る。

そこでとりあえず「とにかくこうしなさい」と、やるべきことを端的に指示している。目的がしっかりしていれば、あとは自分で考えて適切に行動するのが当然だからできるだろう。私の指示だと言えば周囲も協力することは当然だから、皆が彼に協力するのに。

しかしB君は、私が指示したように業務を進めない。あまつさえ、あまり重要ではない方向に時間と労力をかけて、締め切り直前まで状況を報告してこない。状況がわからないとイライラする。

上司に報告するのは仕事として当然なのに、なぜこちらからいちいち訊くまで報告しないのか?B君はきちんと仕事をしてくれない。一体どうなっているのか???

【部下Bさんの言い分】

上司Aさんから業務を指示されたので、目的・背景・詳細を確認したいと思って必要な事柄を質問しました。

するとAさんは「忙しいのに全部私に指示を仰ごうとするな、そんなことなら私が自分でやったほうが早いではないか。自分で考えればわかることばかりだろう。」と、説明を嫌がられるのです。

これでは必要な情報が得られず、仕事をするうえで常に不安がつきまといます。
各方面に根回しして了承を取り付けるには、事前にしっかりとメリット・デメリットの検討や間違いのない根拠が必要なんです。少ない情報だけで相手を動かそうとするのは無理があります。ただでさえ上司の強引な発言は嫌われているのに…。

それでも仕方なく自分で仕事を進めていたら、まだ締め切り前なのに「B君、なぜ指示をした通りにやらないのか?」と指摘されました。説明してくれない中で一生懸命やっているし、あなたの代わりに各方面に話をして頭を下げているから時間がかかって当然なのに!と憤りを感じます。

締め切りはまだ来ていないのになぜ怒られなければならないのでしょうか?これはもうパワハラでは?Aさんは上司として問題があるのではないでしょうか?

上司Aさんと部下Bさんのやり取りを例に挙げましたが、このような行き違いや受け止め方の違い、レベル感のズレなどは、どちらかが意図的に修正対応をかけなければまず改善せず、悪化する一方になります。

職務責任上は、このギャップを埋めるのは上司Aさんの仕事ですが、AさんもBさんも自分の色眼鏡(価値観や評価によるフィルター、過去の人間関係による先入観やシミュレーション)を通して相手を見ますので、いつもうまく行くとは限らないわけです。

そして、うまく行かないこと(コミュニケーションギャップ)が実績として重なった結果、それぞれが「相手の行動を学習」して「色眼鏡」を通して相手を見るようになります。人それぞれで作り上げた色つきレンズは、その色によって世界や対象の見え方に影響を及ぼします。

それぞれの立場による色眼鏡

【上司Aさんの色眼鏡】

「B君はいつも不安ばかり並べて一向に行動しない。なんでも自分で考えずに判断を仰ぎ、答えを欲しがる。親心で突き放して自分で考えさせたら、いちいち判断が遅い。自分で考えないから成長しない。彼には期待できない。」

【部下Bさんの色眼鏡】

「Aさんはマネジメントを面倒臭がる。想定されるトラブルを未然に防がないと、手戻りでコスト増えるし、関係各所にも迷惑がかかるのに、プロジェクトの途中で「俺がなんとかする」と言って一人で突っ走ってしまう。
「俺が言う通りにしろ」というのはマネジメントではなく単なる強要だ。あの人の下についた自分は不運だ。」

この「色眼鏡」は、なんらかのきっかけが無ければ、改善することはありません。色眼鏡を通したコミュニケーションを脱却するために、何が有効でしょうか。
すでにこじれた人間関係トラブルとして人事に回ってきたときに、人事はどのように対処すべきでしょうか。

その一つの手段が、エニアグラムによる性格タイプの分析です。エニアグラムでは、自己のタイプを受け入れ、相手のタイプを受け入れることで、より良い人間関係を育てるためのアプローチについて学ぶことができます。

(参考に、エニアグラムの9つのタイプごとの強み・傾向をまとめた表を掲載します。上司Aさんと部下Bさんはどのタイプか考えてみてください。)

次回は、この事例について、AさんとBさんそれぞれのタイプ判定をもとに、どのような理解とアプローチがあれば状況を改善できそうか、考えてみることにします。

長文にお付き合いくださりありがとうございました。

ご興味があれば、以下リンク先にWEB診断がありますので、ぜひご自分のタイプ診断をしてみてください。

日本エニアグラム学会 90問回答式チェック

【エニアグラム導入の注意点】

エニアグラムを導入する際には、経営者・人事担当・部門長/マネージャーに注意が必要です。下記の内容について、エニアグラムの専門家に相談したうえで導入をされることをお勧めします。

①「タイプは本人が納得するまで決めつけない」…エニアグラムで最も重要なのは自己のタイプ認識ですが、このタイプを当初に誤認(ごにん)してしまうケースが非常に多いです。
ワークショップに何十時間も参加していた人でも、気づいてタイプの認識を修正する場合が多々あります。
ですから、最初に判定したタイプでも、本人が納得していなければタイプの要素を押し付けてしまわないように注意が必要です。「自分の内面の目を背けてきた部分」に目を向ける学びですので、慎重に対応する必要があります。

②「安心・安全の場を担保する」…エニアグラムのワークを行う場合、その中で話される内容はその場限りの情報として扱いましょう。
ワークの中で過去に苦しんだ辛かった体験を話すのは、ワークの場のみにしてください。ワークの場を終了した後、業務中などにネタとして話すことは、研修としても職場としても、心理的安全性を破壊する行為になります。
マネージャーのマネジメント能力向上にも、メンバーのパフォーマンス向上にも、百害あって一利なしですので、事前に参加者にしっかりと念を押すアナウンスをしておくことをご注意ください。”

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執筆者

澄川寛

CANTERA8期卒業生。
EC系ベンチャー立ち上げ参画→リクルートキャリア→電子カルテベンダー営業所責任者等を経て、株式会社リソーシズを創業。医療業界で経営コンサルタントとして活動し、事務長として複数の医療機関で経営支援を行っている。
人事コンサルティングでは、主に人間関係トラブルやマネジメント問題に対応。性格類型分析のエニアグラム心理学をベースに経営層/メンバー間の認識ギャップや意思疎通の改善を行い、その後は中長期で組織が活性化するよう、人員体制見直しや管理・教育制度の支援を行っている。

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