不人気企業の採用を成功させるために意識すべき「隠れた意思決定者」と、事業を加速させる「リブランディング」

最終更新日:2020/12/31

Writing by:酒匂光晴

「毎年新卒採用に苦戦している」「良い人が採用できない」「内定を出しても断られてしまう」「ウチみたいな企業には魅力がないのでは」そのような悩みを持つ企業は少なくないのではないでしょうか。

また、知名度の少ない中小・ベンチャー企業はもちろん、残念ながらいわゆる不人気業種・職種と世間で言われてしまっている業界で、自社の事業を加速させるエンジンとなる採用活動を円滑に進めていくためにはどうしたらよいのでしょうか。

ウチの会社はなぜ採用がうまくいかないのか?

以前の記事(「採用力の公式」から自社の採用戦略を問い直す)で取り上げた通り、採用には「採用力」が大きく影響します。
「採用力」=「企業力」×「採用条件・待遇」×「採用活動」です。主に不人気業界や不人気職種や、中小・ベンチャー企業の場合、多くは「企業力」における「認知度・イメージ」、つまり会社の知名度や業界・職種のイメージ、将来性や安定性などの力が他社と比較して小さいことが課題として挙げられます。

「企業力が小さいなら採用をうまくいかせることなんてできないじゃないか!」そんな声が聞こえてきそうですが、企業力が小さくとも、採用を成功させ、事業を大きく伸ばせている会社は実在します。

では何が異なるかというと、採用がうまくいっている企業の多くは「自社の存在意義」や「自社で働く意味や価値」「他社にはない自社の魅力」を採用ターゲットを含む「周囲の人々からも共感される」レベルで再定義し、言語化しているということです。

隠れた意思決定者に向けて「自社で働く意味や価値」を投げかける

私の長年の採用支援の経験から、不人気企業・職種の多くは、求職者本人が働く意思があったとしても「周囲」の家族や友人、恋人から反対されるというケースが多くみられます。

その多くは業界や職種に対するイメージだったり、世間体だったりするのですが、多くの求職者は周囲からの「なぜこの業界・企業で働くのか?」という問いが発生した際に、自信をもって返答できないことが多く、結果内定辞退や選考離脱が起きたり、そもそも応募をしないという状況までもが発生してしまいます。

一方、採用がうまくいっている企業はこの「なぜこの業界・企業で働くのか?」といった問いに対し、求職者自身が周囲に対して自信をもって語れるような仕掛けができています。

本来、企業が存続している以上、必ず誰かの役に立っているから利益が確保され、存続しているわけです。
その自社の「存在意義」や「働く意味や価値」を解像度高く、誰もがイメージできるレベルで言語化することで、採用ターゲットが周囲の隠れた意思決定者に対して「自社で働く意味や価値」を語れるレベルになるまで落とし込めているのです。

事例紹介:従業員200名のレジャー企業の新卒募集

関東近郊に本社を構えるとあるレジャー企業の課題は、今後の事業拡大に向けて新卒採用を成功させることでした。

しかし、業界のイメージは悪く、内定を出しても親の反対などで辞退されることが多い状態が続いていました。
毎年10名の採用目標は達成されず、採用の質と量の担保をしなければ、新規事業となる飲食店や小売店の出店もままなりません。

そこでこの会社は社員の全階層から成る「リブランディングプロジェクト」を立ち上げ、そもそも会社がこれまで培ってきた事業の意味や価値から、改めて自社は誰の何の役に立ちたいのか、社会をどうしていきたいのかという「存在意義」を捉え直し、その上で自分たちの業務における「働く意味や価値」を再定義していきました。

そこで出てきた自社の「存在意義」と「働く意味や価値」は以下の通りです。

1.存在意義…「この地域の娯楽と食を支える街づくり」

2.働く意味や価値…「この街にない娯楽と食を生み出し、この街を元気づける」

一見、普通に見える内容かもしれません。
ただ、このプロジェクトを通じて、会社が向かう方向が明確に定まりました。

それは「この地域で」「街にない娯楽と食を生み出し」「街づくりをする企業」という方向性です。これは結果的に会社のミッション、ビジョンとまでになりました。

そしてこの「自社の存在意義」「自社で働く意味や価値」をメインメッセージとして求人募集を行ったところ、関東近郊の郊外エリアにも関わらず、エントリー1,000名、採用12名を達成。これまでにない質の学生を採用することができるようになったのです。

そしてこの年以降も継続的に採用ができるようになり、ミッション・ビジョンに基づいた育成や組織づくりが行われることによって、人材の成長や定着率も向上し、事業展開も加速できるようになっていきました。

採用を起点に自社の事業を加速させる

このように、自社のそもそもの「存在意義」や「仕事の意味や価値」を再定義することで、自社のミッション・ビジョン・バリューが再構築されます。
これはいわゆる「事業のリブランディング」でもあります。それにより採用のリブランディングが起き、採用がうまくいくだけでなく、既存の従業員が「私たちはどこに向かうべきか」「私たちの仕事の意義や価値は何か」を理解し、仕事に貢献意欲を持ち、「誰の何の役に立っているのか」という自己効力感も生まれ、組織として強い求心力を持てるようになります。

もちろん先の事例の裏では、このミッション・ビジョンをもとに経営層のあり方や組織のあり方までも一新しようと、創業社長が決意をし、自ら実行の旗を振ってくれたことが、組織変革が進んだ大きな要因でもあります。

しかし、採用を起点に、自社の意義や価値を捉え直すことで、企業の成長のエンジンを生み出す可能性があるということは言うまでもありません。

採用の目的は事業を成長させること

今回の記事では、不人気企業であっても自社の採用そのものを「リブランディング」することを通じて、事業そのもののを「リブランディング」し、自社の「存在意義」とは何か?「自社で働く意味や価値は何か?」について考え直す機会になればと思い執筆しました。

多くの企業は大手企業や有名企業と比べ採用力が強くないのが実情だと思います。

そんな中でも、自社で働いてくれている仲間がいるということは、必ず自社に何らかの働く理由や魅力があるはずです。自社のこれまでの実績から、誰の何の役に立っているのかという魅力を問い直し、自社の「存在意義」や「働く意味や価値」を練り直すことによって「戦略的採用=戦いを略する採用活動」ができる企業が増えていけば、雇用のミスマッチが減り、企業と個人のベストマッチングによる事業成長が起こると信じています。

採用の目的は事業を成長させることであり、採用を通じて既存の従業員が自社の魅力を再発見することでもあります。この記事が皆様の何かしらのお役に立てれば嬉しいです。

採用についてより詳しく学びたい!とお考えの方はこちらを是非ご覧ください。
【執筆者も講師を務めています!】

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執筆者

酒匂光晴

CANTERA ACADEMY9期卒業

カエテク株式会社 代表取締役

リクルートグループの人材領域事業にて営業、営業企画、商品企画、代理店統括などに携わり、営業マネジメント、事業マネジメントを経験。その後独立し、人事・営業専門のコンサルタントとして活動しながら、数社のベンチャーの立ち上げ、営業責任者、役員を歴任。

2019年3月、「幸せを実感できる社会を創る」をミッションにカエテク株式会社を創業、代表取締役に就任。企業の存在意義をクライアントとともに捉え直し、本質的な人材採用、組織づくり、人材育成を展開。コンサルタント、講師、ファシリテーター、講演家。おもてなしNPO運営。旅行・食べ歩き・飲み会・楽しいことが好き。

基本的にアホで自由人。

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